代表インタビュー

プロフィール

1972年生まれ。横浜国立大学教育学部美術科卒業。(3年次に文部省奨学生としてフランスに留学)。 ワイン商社勤務後、翻訳会社へ。 プラント建設案件のアルジェリア人プロジェクトマネージャーの秘書、JICA案件のフランス語通訳(トーゴ、中央アフリカ、ジブチ、モロッコ、セネガル、マダガスカル、カーボベルデ)に従事。 法政大学大学院(夜間)にて開発経済学修士。2011年にフランシールを創業。

フランシールを立ち上げたきっかけ・理由を教えてください。

前職でも翻訳会社に勤務し、23歳から38歳までの15年間、翻訳のコーディネーションや通訳業務を担当しておりました。その間、ODA(政府開発援助)案件やプラント関連のプロジェクトにも自ら携わる貴重な経験をさせていただきました。これらはすべて、当時の職場の環境と支えがあってこそのものです。 3人目の子どもを出産した際、私が長年一緒に仕事をしてきた上司(当時は会長)の病気が重なったことがきっかけで、退職を決意しました。ちょうどその時期、3人の子どもが同じ保育園に通っており、保育園の事情にも対応しやすい環境を求めて、自身で会社を設立することを選びました。 しかしその直後、東日本大震災が発生しました。当時は、営業活動を続けるべきか、それとも避難を優先するべきかという大きな判断を迫られる日々でした。しかし、すでに仲間たちが増え、チームとしての強い絆が育まれていました。この状況の中で、私たちの使命は、日本と海外をつなぐ架け橋となり、さまざまな人々を支えることだと強く実感しました。 また、この経験を通じて、営業活動で得た利益を社会に還元することを目指すという決意も新たにしました。これが私たちの活動の原点であり、これからも大切にしていきたいと考えています。

苦労した経験や、嬉しかった経験はありますか?

創業時の苦労は、今でも忘れられないものがあります。準備していた資金はあっという間に底をつき、震災直後の営業活動では、「東京はそれどころではないのでは?」と言われることもありました。拠点としていたサンシャイン60のレンタルオフィスでは、多くの外資系企業が関西方面に移転していき、真っ暗なフロアでの営業は本当に心細いものでした。 それでも、当時一緒に働いてくれたスタッフたちが、本当に頑張ってくれました。仕事がない時期や、仕事があっても納期が厳しい中で、残業代も十分に支払えない状況が続きました。それでも、「自分の給料は自分で稼ぐ」というモットーを胸に、全力を尽くしてくれました。また、以前からお付き合いのあった翻訳者の皆さんも、私たちを助けてくださいました。 今、会社がこうして続いているのは、そうした皆さんの協力のおかげだと心から感謝しています。私ひとりの力では、ここまで継続することは決してできなかったと思います。

印象に残っているエピソードがあれば、教えて下さい。

創業以来、さまざまなお問い合わせをいただいてきました。たとえば、「200人規模の海外学生を迎えるため、17人の通訳ガイドを手配できますか?」「7,000ページの法定翻訳を3か月で仕上げられますか?」「イベントに10人以上の同時通訳者を手配してほしい」「リモートで多言語同時通訳を使った研修会を行いたい」など、場所や言語、内容が予想外のケースも多くありました。 コロナ禍では、「国境を超えるあなたを応援します」というフランシールの方針にもかかわらず、移動制限によりお客様や通訳が現場に向かえない状況が続きました。その中で始めたAI用コーパスや同時通訳データの作成は、当初こそ慣れない作業に戸惑いがありましたが、社内のAIに関する知識を深める大きな成果をもたらしました。 どんな難しい依頼であっても、スタッフは創意工夫を凝らして対応してきました。こうしたチャレンジは、新しい案件やサービスの可能性を広げる原動力にもなっています。フランシールには、常に挑戦を続ける精神が根付いています。 現在、当社には5つのフィロソフィー(理念)があります。その中の一つ、「チャレンジする会社」という理念は、こうした困難な依頼に果敢に挑戦する社員たちの姿勢があってこそ成り立っていると感じています。 また、2023年からフランシールは東京都のスキームである「ソーシャルファーム」にもチャレンジしています。この取り組みは、障害者をはじめ、さまざまな理由で働くことに困難を抱えている方々とともに仕事をしながら、経営を発展させていくことを目指すものです。 どんな課題や困難も、最初は「難しい」と感じるものです。しかし、その壁を乗り越えた先には、必ず新しい未来があると信じています。この信念のもと、私たちはこれからも挑戦を続けていきます。

今後の目標を教えてください。

現在進めているソーシャルファームは、多様性を備え、成長する会社になるための一つのステップに過ぎません。私たちの目標は、会社を成長させるだけでなく、同時に社会への貢献も増やしていくことです。 翻訳業界は、AIの進化や同時通訳アプリの普及、自動字幕や音声合成技術の発展などにより、大きな変化の時期を迎えています。今後、通訳や翻訳はAIを活用し、従来とは全く異なる形のサービスへと変わっていくでしょう。 こうした中で、お客様が何を求めているのかを見極め、それに応えるために、私たち自身も進化し続ける必要があります。これからの翻訳会社には、コンサルティングの要素が求められる時代が訪れると考えています。そのためには、スタッフ一人ひとりが、お客様の課題や期待を深く理解することが重要です。 フランシールの社員は、出身地、障害の有無、LGBTQなど、多様性にあふれています。異なる背景を持つ人々を理解することは容易ではありませんが、新しいアイデアの源になります。また、AIが進化する一方で、人間にはAIにはできない「人間力」がより求められる時代が来ると考えています。多様性は簡単ではありませんが、私たちの強みであり武器です。これを営業の活力や創意工夫の源として、今後の活動に活かしていきたいと思います。

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