みなさん、こんにちは。フランシールに所属するフランス語の通訳、翻訳をしている芹澤と申します。
私の業務は、お客様の意図している文章や話そうとしている言葉を、世界で使われている様々な言葉のある一つのものからもう一つのものに置き換える(すなわち翻訳)か、言い換える(通訳)する事になります。
そして私自身は、ODA(日本の開発援助)のお仕事を頂いて、アフリカのフランス語圏の国々に行って調査団の通訳をしたり、関連する翻訳をさせて頂いたりが主たる業務です。
日本語や英語で書かれた書類をフランス語にしたり、フランス語で口頭で話されている内容を日本語に置き換えて話す、等が仕事、という事になります。
それ以外にも、パソコンを組み立てたり、色々な機械を分解して、壊れた2台のゲーム機から動く1台を再生したりする事などを趣味としているので、パソコンサポート的な事もしております。
そんなわけで今回は言語のお話ですが、プログラミング(プログラム)言語についてのお話をさせて頂きます。
世界には3000から5000もの言語があるといわれています。そんなにあるとは思っておらず、実は今ネットで検索して出てきた数字です。すごい数あるものですね。
今はコロナ禍ということもあり、海外からの観光客もほとんど日本にいらっしゃらないですが、今や街を歩けば外国語を話す方はすぐそばにいらっしゃるわけで、色々な言葉を見聞きすることも身近になっている訳です。
ところで、私たちが話したり聞いたり、書いたり読んだりする言語以外にも言語と呼ばれるものが存在します。プログラミング(プログラム)言語と言われるものです。
私たちは余り意識せずに毎日暮らしていますが、じつは私たちのまわりにはプログラム言語で出来たものであふれかえっています。
パソコンやスマートフォン(スマホ)は私たちの生活に今や欠かせない道具としてひとり一台、あるいはそれ以上の数持ち歩いたり、自宅やオフィスでそれを使って毎日仕事や生活をしています。
私たちが何気なく使っているパソコンやスマホは機械として様々な部品で出来ていますが、目に見える部品だけでなく、様々なプログラムという目に見えない部品からも出来ています。
スマホも電話を掛けられるコンピュータな訳ですが、コンピュータは機械語とかマシン語と呼ばれる、頭脳であるプロセッサという部品が直接理解出来て、実行出来る一連の命令で動いています。
スマホに入れているラインやスカイプ、パソコンで毎日使っているワードやエクセルといった様々なソフトウェアやアプリもそうですが、OS、いわゆるオペレーティングシステムと言われる、パソコンやスマホを動かしている、おおもとになるシステムもプログラムです。
パソコンの自作をされた事がある方はお分かりでしょうが、パソコンの部品を組み立てて電源スイッチを入れてもそれだけでは何も動きません。
オペレーティングシステム(OS)が入っていないからです。パソコンを組み立てて、OSをインストールして初めて私たちが使えるパソコンになるわけです。
スマホも同じです。何も入っていないスマホは、電源ボタンを押してもうんともすんとも言いませんし、何も起こりません。プログラムが何も入っていないからです。
ただ、スマホの場合には、私たちが手に取ってみる時にはすでにOSが入っていて、電源ボタンを押せばOSが立ち上がる様になっているので、私たちは気が付かないのです。
さて、iPhoneであれアンドロイドであれスマホの画面にはアイコンが表示されていて、それをタップしてアプリを起動させます。パソコンにもウインドウズやマック、リナックスといったOSがあります。そしてデスクトップにはアイコンが表示され、それをクリックする事でプログラムを実行させているのです。
私たちは絵(アイコンですが)を指先で軽くたたいたり(タップ)、マウスでカーソルを動かして絵のところに持って行ってボタンを二回たたいたり(ダブルクリック)しているだけですが、パソコンやスマホの中では、その絵(アイコン)が示しているプログラムを実行せよ、という命令が実行されているのです。
ところで、翻訳という言葉は英語にするとTranslationと言いますが、通訳はInterpretationと言います。このInterpretationという言葉は通訳する、という意味以外にも解釈する、とか判断する、という意味があります。
言語という繋がりで見ると、スマホやパソコンはアイコンをタップしたり、クリックしたりする行為をInterpretation解釈、通訳してプロセッサに伝えている訳です。
そう考えると、プログラミング(プログラム)言語というのは人間とコンピュータという、そのままでは通じ合えないものどうしをつなぐ言葉なわけです。確かに言語です。誰が言語と呼び出したのか、と感心していまいます。
話をちょっと変えて、これを言うと年がばれてしまいますが、パソコンやスマホどころか、昔はテレビ、と言えばスイッチを入れて(つまみを引っ張って付けるのが多かったです)、その前にかしこまって、眺めるものでした。お茶の間にあって一家総出で拝見させて頂くものでした。それを使って遊ぶなんて想像すらできませんでした。
テレビゲームと呼ばれるものが出てきたのは私が小学生の頃でした。インベーダーゲームが大流行したものでした。喫茶店やゲームセンターに行って、貴重なお小遣いの中から100円玉を投入して、ゲームをしました。家でやるなんて代物ではありませんでした。
私がそんなものに興味を持ったころ、原始的な家庭用テレビゲーム機やマイコンといったものが世の中に出てきました。
最初期に発売されたNECのTK80、という機械は、何で知ったのか覚えていませんが、電子部品の塊で、なんだかすごく憧れました。自分ではんだ付けしたりしないといけないですし、今のパソコンのようなアルファベットのキーボードがあるわけでは無く、電卓の様なキーボードでマシン語のプログラムを入力するもので、算数も数学もとても苦手な身にはとてもでは無く手が出せませんでした。だいいち、値段が高すぎて夢に見るようなものでした。
それからしばらくたって池袋のパルコにあった三省堂書店にキーボードのついたパソコンが置かれていたのを覚えています。七色のリンゴのマークがついていました。今思えばあれはアップルIIでした。マッキントッシュの先祖になるアップルが世界中に知られることになったパソコンでした。当然お値段も高すぎてとてもではありませんが手の届くものではありませんでした。
その後ファミコンなんかが出てきました。
いろんな会社からゲームが出来たり、プログラムが出来たり、というパソコンと呼ばれるものも出てきました。
そんなとき、それらの初期のパソコンの中から割と安く手に入るMSXというのを手に入れました。これはテレビにつないで使うもので、そのころのファミコンと同様にアンテナのところに接続しテレビでNHKの総合放送が映る1チャンネルのとなりの2チャンネルにして写して使いました。
MSXはファミコンの様にカートリッジ(ゲームカセット)を差し込むとゲームが出来ます。市販のゲームを遊ぶときはカセットを刺してから電源ボタンを押すとゲームが始まります。何も刺さずに電源を入れるとベーシックというのが立ち上がります。
ベーシックは初心者も扱いやすい、と言われたプログラム言語になります。
ただし、電源を入れて立ち上がったベーシックはコマンドを打つとかプログラムを保存していたカセットテープから読み込むとかしないと、何もしてくれません。
当時MSXの雑誌もほかのパソコンの雑誌も発行されていました。ゲームの情報なんかが載っていたりするので私は毎月MSXの雑誌を購読していましたが、そこには巻末に毎月ゲームのプログラムが掲載されていたりしました。読者が応募して選ばれたゲームだったりするのですが、確かベーシックのプログラムもマシン語のプログラムも掲載されていたと思います。
マシン語は16進数の数字の羅列で、とてもじゃないけど、間違わないで打ち込むなんてことは天地がひっくり返っても出来るとは思えません。なのでそれよりはとっつきやすいと思われた、ベーシックで書かれたゲームのプログラムなんかを打ち込んでカセットテープに保存して遊んだりしていました。私のMSXにはカセットテープ以外に保存出来る方法がありませんでした。そうでないと、あんなに苦労して時間を掛けて打ち込んだプログラムは電源を切ると消えてしまったのです。
そうして苦労してプログラムを打ち込みます。
でも、どこかに打ち間違いがあると動かないのです。ゲームが始まりません。ゲームといってもインベーダーゲームを簡単にしたような奴とか、ボール(玉)が動くだけ、とかなんですけど、どこかで打ち間違っているのです。
SyntaxErrorという表示を何回見たことでしょうか。そして、ため息をつきながら間違っている場所を探しては直していくのです。
これをデバッグと呼ぶようですが、当時そんな用語なんか知る由もなく、ここだ、あった、なんていいながら直してはカセットテープに保存していました。何日もかかっても一向に動いてくれない、なんてこともしばしばでした。結局動かないままあきらめたことも何度もありました。
と、どうでもよい個人的な思い出になってしまいました。
そういえば、翻訳や通訳も同じです。ちょっと言葉を間違える、言葉の順番を間違える、それだけで文章の意味は変わります。
思い出話は置いておいて、現在に置き換えてみます。最近弊社も音声関連のお仕事なんかをやらせて頂いています。そんな中、私たちもプログラム言語について色々勉強をしたりする機会がどんどん増えているのです。
今回のタイトルのプログラミング言語から思い出話になってしまったわけですが、今のパソコンもスマホも基本的な仕組みは昔のものと変わっていません。
プロセッサが命令を処理する事で動くわけですが、私たちの目に触れる中では一番基礎の部分になるオペレーティングシステムも私なんかからすれば膨大なプログラムの塊をプロセッサが処理することで動いているのです。そして、様々なアプリはOSの上で動くわけです。
プロセッサ自身は機械語(マシン語)による命令で動くわけですが、わたしたちにはマシン語は難しすぎます。ですからプログラム言語を使ってプログラムを書いて、それがマシン語に置き換えられ、すなわちInterpretationされてパソコンやスマホは動いている訳です。そう考えると私の仕事である、翻訳や通訳の世界と良く似ている気がします。
でも、正直全然違う気もします。
フランス語通訳、翻訳 芹澤 紀青
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