2024年6月17日、フランス人のDさんが「フランスでは大混乱なんですよ!この間欧州議会選挙が終わったばっかりなのに、また選挙にいかないと!」と大騒ぎしていました。
私 : | 何がそんなに大変なの?
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Dさん : | これを見てください!紫は全部右翼の国民連合(Rassemblement National:RN)です!」
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(出典:LCP)
私: | 極右が全国制覇?なにこれ?フェイクニュース?
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Dさん : | 本当ですよ!欧州議会選挙で右翼が圧勝して、あせったマクロン大統領が国民議会を解散しちゃったんですよ。でも彼の政党は人気がないし、また国民連合(RN)が勝ったらマクロン大統領の任期は残り3年じゃなくて3週間かもしれない!
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Sさん : | (横から)昔あったコアビタシオン(*注)ですね。確かシラク大統領とジョスパン首相のときのような・・。
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Dさん : | 国民連合が勝ったらマクロンは国民連合から首相を指名しないといけないし、そうなると彼は残りの3年間、何もできない人形のような存在になっちゃうんですよ。
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私 : | 昔コアビタシオンって何だろうと思ったけれどそういうことだったんだ。 それにしてもルペンってちょっと昔までは移民反対の極右だって煙たがられていた気がするけれど最近はそんなに人気なんだね。 |
Dさん : | これも見てください。 |
(出典:Ouest-France, 地図 Wikipedia「マイヨット島」、L’aménagement linguistique dans le monde 「コモロ連合」 から一部加工)
私 : | マリーヌ・ルペン?国民連合(RN)の元党首の? |
Dさん : | 彼女、4月にアフリカのマイヨット島にいったんですよ。アフリカや移民をあれほど嫌っていた政党が、今やアフリカで人気です。 |
私 : | なんで?これもフェイクニュース? |
Dさん : | 本当です。マイヨット島はコモロ諸島が独立したときにフランスに残った島です。今ここで外部のアフリカから移民が押し寄せて住民が困っているらしく、移民反対を主張する国民連合がこの島で人気になっているんですよ! |
私 : | 国民連合は移民反対だけれど、アフリカが嫌いというわけではなくなってるんだ・・。不思議。時代は変わるね・・。 |
Dさん : | ちなみにマリーヌ・ルペンは昔フランスを守ったジャンヌ・ダルクを自分に重ねているんですよ。でも、昔からの英雄を自分たちの党のシンボルのように使うなんてずるいですよね。 |
私 : | はあ、ジャンヌ・ダルクを? |
Dさん : | もし自民党が徳川家康を自分たちのシンボルにしたらどう思いますか?? |
私 : | ・・・・・ずるい・・かなあ?かも?いや、想像するのが難しいっていうか・・。 |
(いったん話は終わって仕事に戻る一同)
(*注)コアビタシオン:フランス語(Cohabitation)は同棲の意味。転じて、フランスで大統領が異なる党派に属する首相を指名し、ともに政権運営にあたること(保革共存政権)。大統領は国民の直接選挙で選出され、首相の任命権を持ちますが、議会選挙で反対政党が多数になった場合でも、その党派から首相を任命しなければなりません。大統領の権限には首相の同意が必要なものも多いため、大統領はコアビタシオンの状況下ではその影響力が(全くなくなるわけではありませんが)縮小されてしまいます。
それにしても、と私は思うのです。
友達同士でも政治の話で喧嘩したり、SNSをブロックしたり、家族で暴力に発展したりすることもあるフランスの政治の話題。
日本でも都知事選が始まりましたがフランスの選挙に比べるとどこかのんびりして牧歌的なムードです。
思えば2016年6月23日、イギリスで投票者の51.9%がEUを離脱することを選んだことでBrexitが決まったとき、社内のイギリス人スタッフが目の前でがっかりしていました。
同年のアメリカ大統領選挙でトランプが大統領に決まったときもアメリカ人スタッフが「もうアメリカ人やめたい」と言っていました。
ほんの少しの差でその後の生活ががらりと変わる欧米の選挙に「そんな大事なこと、選挙で決めていいの?」と思ってしまいそうになる自分がいます。(この考え方がひょっとすると日本的?)
他の国の様子は、自分たちの「なぜ?」を浮かび上がらせます。だからいろんな国の人と働くのは刺激的で面白いのかもしれません。
(文 鍋田)
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