新型コロナ感染症により今年春の緊急事態宣言以降、海外で活躍する日本人は海外へ行けなくなり、また日本への研修生や留学生、ビジネスマン達は来日が難しくなるなど、海外との交流が消える事態になりました。日本中に観光客があふれていた2019年までの生活が嘘のように日本から外国人の姿が消えて久しくなります。「国境を超えるあなたを応援します」をモットーに働く私たちはとても戸惑いましたが、私たちが普段お世話になっているお客様も同様、あるいはさらにジレンマを感じていらっしゃるかもしれません。
ただ、この数か月のコロナ禍は、あらゆる分野で数年分の進化をもたらしました。海外や国内との安い電話・面談ツールでしかなかったオンライン会議は、この春からは必要不可欠になっています。それらオンラインツールは実は前から存在していたので「再発見」したとも言える気がします。検索してみたらこんなツールもあんなツールもあった、これも試せるかな?同じシステムでもこんな使い方もできたの?と驚きの日々でした。
まだまだ先が見えない状況ですが、とりあえず過去数か月で弊社が試行錯誤を重ねてた経験をまとめてみました。以下にWithコロナ時代の新サービス(通訳編)を案内させていただきます。
オンライン通訳について
言わずと知れたZOOMなどのWEB会議やオンラインセミナーなど、遠隔システムを使った会議等の通訳です。
国内でも海外でも複数の拠点間で、また、様々な言語での通訳が可能です。コロナ禍で直接会えない国内のお客様や、海外のパートナーとの商談、会議、研修・セミナーなど様々な用途で利用可能です。
しかしながら、オンライン通訳には以下のようなデメリットもあることがわかってきました。
1.誰が話しているかわからない
2.雑音が入る。
3.音飛びする。
4.音声が聞き取れない
5.通訳のタイミングが合わない
6.音質が悪い
7.会場の様子がわからない。
そんな問題点を解決すべく様々な試行錯誤を行ってきました。またオンライン通訳といってもただ一参加者として通訳が会議に参加するのか、それとも同時通訳として2つの言語で会議を同時に開催するのかでかなり違いが出てきます。まずはその違いから説明いたします。
逐次通訳?同時通訳?
オンラインに限らなくとも、「逐次通訳と同時通訳、何が違うの?」と尋ねられることがよくあります。様々な点において異なりますが、特に下記の2点の差は大きいです。
①スピード
逐次通訳はスピーカーの発話中はメモなどを取り、そのあとで通訳をします。つまり発話の時間はほぼ2倍となってしまいます。一方で同時通訳はスピーカーと同時に話していくため、会議自体、通訳が話し終わるのを待つ必要がなく、所要時間が短縮されます。
②予算
同時通訳の場合、通訳は集中力等を維持しやすい15分を目途に交代していきます。そのため、原則半日で2名、1日で3名の通訳がローテーションで業務を行います。つまり、逐次通訳なら1名で済むところ、必要な通訳人数は2~3名となります。また、特別な訓練を受けた同時通訳は単価も高くなるので通訳料金だけで差が出てきます。さらに、同時通訳を行うためには、通訳同士が並んでモニターしあえる通訳のブース及び音声を送受信するための機材が必要です。単純に1日の金額を比較しても、逐次通訳の場合と、同時通訳では1日あたりで6~7倍の差が生じます。
普段の定期ミーティング、面談、少人数の研修やクラス、顧客との挨拶などで、多少時間がかかったり、音声の質が悪くても大丈夫なようでしたらオンライン通訳の中でも逐次通訳をお勧めします。費用がかかっても音声の質とスピードを重視するなら同時通訳がお勧めでしょう。
ここではまず最初に逐次通訳について説明していきます。
オンライン逐次通訳
コロナ禍の中でも最も多いご依頼はやはりオンライン逐次通訳です。工事現場の確認や、商談、現地の感染症状況の確認など、日ごろのやり取りを行うためにご依頼いただくことが多いです。以前だったら電話通訳で終わっていた案件も最近はオンラインシステムに切り替わりつつあるようです。
通訳は自宅からや通訳事務所から参加したり、お客様の事務所へ通訳が赴いて行ったりと参加形態は様々です。また利用システムもZOOM, MICROSOFT TEAMS, SKYPE、WebExなどと様々で、基本的にお客様が普段ご利用いただいているシステムに合わせて通訳を行っています。(逐次なので特に音声を切り替えるシステムは利用しません。)
また最近は、「オンラインなら1時間でも対応可能では?」というお声も聴きますが、弊社のサービスでは半日か1日という通常の料金設定を適応しております。というのも、1時間の会議の通訳をする前には資料の読み込み、議事の確認、参加者のお名前の確認など、1時間では終わらない準備がどうしても必要になってしまうからです。
実例①:アンゴラ電力案件に関するオンライン会議(ポルトガル語逐次通訳)
実例②:中南米カウンターパートとのオンライン面談業務(スペイン語逐次通訳)
実例③:マダガスカル農業・畜産・漁業省とのオンライン会議(フランス語逐次通訳)
実例④:ロシア語電話通訳・代行業務及び翻訳業務(ロシア語逐次通訳)
通訳 | 内容 | 参考料金(税別) | 備考 |
逐次通訳 | ZOOMなどのオンラインシステム上にお客様と一緒に会議に参加します。 | 半日:24000円/1人~ 1日:40000円/1人~ (時間が短いとき、内容により応相談) 半日は3時間以内、1日は拘束8時間(1時間休憩)。通訳との打合せ費用別途。 |
少人数の打ち合わせ向き(通訳は基本1人)
通訳は自宅、通訳事務所、お客様の事務所から参加します。 |
次に同時通訳についての説明です。
オンライン同時通訳
ではどのようなときに同時通訳が必要になってくるでしょうか。大人数(10名以上)で集まる会議は一人一人の発話の後で通訳が入ると時間がかかってしまいます。また、大勢のお客様に参加してもらう研修会、セミナー、プレゼンテーションなどはスピード勝負。また、少ない人数で行う会議であったとしてもアポイント時間を有効に使いたい場合は同時通訳のほうが好ましいかと思います。
コロナ禍では多くの業者が様々な形態の同時通訳を試行しています。最近は、同時通訳が自宅などの別々の場所から会議にオンライン上で参加する、同時通訳のプラットフォームを使った会議も増えています。ZOOMもウエビナーが出来るコースを契約すれば同時通訳のチャンネルを選択できる機能がついてきます。2台のPCを通訳が使い分ける方法などもあるようです。
ただ、この「通訳がどんな場所からでも参加できる」というのは通訳にとって便利なだけではないこともだんだんわかってきました。自宅に専用のスタジオを設定しているなどの事前の環境整備がなければ、会議の途中でインターフォンが鳴ったり、子供が横でしゃべる、外で工事が始まった、、、など通訳の集中力を下げる原因が多く存在します。有線の環境をきちんと敷いている通訳ならまだしも、WI-FI環境では音が飛んだりインターネット回線が乱れることも頻繁にあります。これは海外での通信インフラのせいだけではなく、国内のインフラの脆弱性にも依るようです。それに加えて通訳会場そのものがオンライン上にあるため、音声が途切れたり、雑音が入ったり、通訳自身の画像や音声が止まる、など現在の状況では、通常の環境以上の集中力が求められてしまいます。
タブレットで押したら通訳が顔を出す、という夢のシステムは通訳が環境が整って集中できる場所で待機している、内容が比較的簡単で、事前の勉強などがなくても簡単に終わる会話に限られてくるかもしれません。
上記の理由から、フランシールでは下記の2形態をお勧めしております。
オンライン同時通訳①((株)放送サービスセンターのRebase東京を利用する同時通訳)
以前ブログで紹介させていただいた放送サービスセンターさんのRebase東京(四谷)には有線でZOOMなどのオンラインシステムにつながる通訳のブースがすでに用意されています。同時通訳はここを拠点にモニターでZOOM等の画面を見ながら通訳業務を行います。パートナーはすぐ横にいるのと、ブースは密閉された空間なので業務への集中は高まります。
通訳はお互いのタイミングを計りながら仕事ができます。
音声を管理するエンジニアさんがモニターしてくれているので安心です。
実例① アフリカ数か国(カメルーン、ケニア、コンゴなど)とのアワード及び年次会合(仏英同時通訳)。
実例② アジア諸国(ミャンマー、ベトナム、カンボジア)を対象とした水道分野の人材育成についての会合。(日英同時通訳)
通訳 | 内容 | 参考料金(税別) | 備考 |
オンライン同時通訳① | ZOOMなどのオンライン会議システムの同時通訳システムを使って通訳が会議に参加します。
(Rebase東京使用) |
半日:50,000円/1人~ 1日;80,000円/1人~ (原則 2~3名必要) コーディネータ立合費用(オプション)。 通訳との打合せ費用別途。 半日は3時間以内、1日は拘束8時間(1時間休憩) |
海外からの参加者もいる中~大規模の会議向き。通訳は通訳ブースを備えた機材施設(Rebase東京)から参加。視聴者は自分のPCやスマートフォンで通訳を視聴。 2~3名の通訳が参加し原則15分ごとに交代。 現場でブースを設営するより70%程度安くすみます。(半日の機材料金目安:160,000円~) |
オンライン同時通訳②(ハイブリッド型:会場にブースを設営して行う同時通訳。現場からオンラインで配信も行う。)
イベントや研修会を会場で行い、同時にオンラインでも配信する方法です。毎年恒例になっているイベントなどについて、主催者は参加者希望者にオンラインまたは会場を選べる旨予め知らせます。通訳は現場に設営されたブースに並んで入り、タイミングを計りながら交代で通訳業務を行います。ここまでは過去の同時通訳の方法と同じですが、さらに音声をZOOMなどでつないだオンラインシステムにつなげ、会場外の参加者にも同時配信します。会場の参加者はパナガイド(無線レシーバー)を操作して、自宅からの参加者は自分のPCからZOOMでお好みの言語を選んで聞くことができます。
実例①:モビリティ関連パネルディスカッション 自動車業界のトレンドについて専門家が行うディスカッション (日英同時通訳)
実例②:ヘルスケア関連パネルディスカッション (on-site & online)(日英同時通訳)
通訳 | 内容 | 参考料金(税別) | 備考 |
オンライン同時通訳② | 現場に同時通訳の機材、ブースを持ち込み、同時通訳を行います。(別途ZOOMでも配信します。) 通訳は現場で業務。 |
半日:50,000円/1人~ 1日;80,000円/1人~ (原則 2~3名必要) コーディネータ立合費用(オプション)。 通訳との打合せ費用別途。 半日は3時間以内、1日は拘束8時間(1時間休憩) |
海外からの参加者もいる中~大規模の会議向き。通訳は会場で参加。視聴者は会場で、またはZOOMやスマートフォンで通訳を視聴します。2~3名以上の通訳が参加し原則15分ごとに交代。 (注意)機材を会場へ運搬し、設営する必要があるので上記のRebase東京を利用するプランより割高になります。 通訳は会場から進行を実際に確認することができるためオンライン上の音声の不具合やタイムラグに悩まされることがありません。 (半日の機材料金目安:200,000円) |
以上がコロナ禍でのオンライン通訳の概略になります。ちなみに、オンライン配信しない同時通訳は・・・通常の通訳業務となります。通常業務の料金表を参考にしてください。
お客様にお願いしたいこと
以上、説明してきたオンライン通訳ですが、お客様には下記のことをお願いしております。
- 事前に接続テスト(リハーサル)を行ってください。
- Zoom等のオンライン会議システムはお客様でご契約の上、最新版にアップデートしてください。
- 会議参加者はできるだけヘッドセットを使用するようにお願いします。
- 出席者のリストや資料を事前に作成して通訳に共有してください。
- Zoomの表示名はリストと同じ名前にしてください。
- 話していないときはマイクをミュートにしてください。
- 事前に議題もしくは進行表をご準備ください。簡単なメモで構いません。
- 画面共有などで使用する資料は、事前に通訳に共有をお願いします。(ビデオ映像を同時通訳することはしておりません。)
- 逐次通訳の場合は、一発話ごとに訳していきますので、一人ずつ順番にお話ください。
- Wi-fi接続は不安定な場合がありますので、有線での接続をお勧めします。
- ヘッドセットまたはマイクを使って発言してください。(同時通訳の場合は必須)
- トラブルが発生した場合の連絡方法・体制を確認させてください。(オンラインのトラブル対応を外国語で行う必要がある場合は通訳とは別のスタッフがホストとして待機いたします。)
- 会議のレコーディングをする場合、通訳の音声も録音する場合は事前にご連絡ください。通訳音声の著作権は通訳者に帰属し、通訳者の許可なく二次使用(インターネット上や、公共放送での公開、録音データの販売)をすることは禁止されております。(2次使用料が必要になります)。
いろいろお願いすることも多いのですがどうぞご協力お願いいたします。質問等はコーディネータまで遠慮なく連絡ください。
キャンセル料金について
- オンライン通訳についても通常のキャンセルポリシーを適用いたします(6営業日前まで0%、5-4営業日30%、3-2営業日50%、前日当日100%)。複数社と別々に会議を開く予定が合同会議になった、という場合もキャンセルポリシーの適用になりますのでご注意ください。
- 通訳と機材は、キャンセルポリシーが違うのでご注意ください。(機材も、ブース設営の場合と、Rebase東京の場合ではキャンセルポリシーが異なります。)
弊社ブログ
ちなみに、オンライン通訳については今までの弊社ブログにも細かく記載しております。こちらも是非ご覧ください。Rebase東京の様子や、オンラインで通訳を依頼するときのヒントを記載しています。
オンライン通訳の注意点 2020年9月15日ブログ
オンライン同時通訳とは?② 2020年9月4日ブログ
コロナ禍での遠隔セミナー(REBASE東京について) 2020年9月2日ブログ
オンライン同時通訳とは?① 2020年5月14日ブログ
また、通訳が自宅から参加する同時通訳システムについては弊社でも鋭意研究中です。新しい情報は今後もブログに記載していきますので時々ご覧になっていただければと思います。
以上Withコロナ時代の新サービスとしてオンライン通訳を説明させていただきました。次回はWithコロナ時代の新サービス(動画編)を予定しております。
コメントを残す