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Linguistic assistance beyond borders

フランシール代表が綴った、通訳になりたて時代の失敗エピソードや、コロナ禍に思ったことなど。もともとは美術の先生になりたくてフランスに留学したのに、美術の才能をあきらめ、日本やアフリカでの通訳業務に挑戦した伊藤尚江のブログです。

<めざせ語学マスター> RとLが聞き分けられない!?

2021年7月13日

私がフランスに留学したてのころ、フランス語の「靴」という単語「chaussures」の発音ができず、カタカナのまま「ショシュール」と言っていたらホストファミリーの子どもたちにゲラゲラ笑われ「もう一回言ってみて!」と、再度大笑いされたのを覚えています。でも自分では何が違うのか分からない。私の耳にはかなり同じように聞こえるのに・・・。chの発音とssの発音が同じになっているから??「クチュ」って聞こえてるのかな・・・。

語学学校でも一人校庭で「発音の違いがわからない・・・」としょげていたいたことがありました。見かねた知人がそばにきて「siはスィ、chiはシって言ったらいいんだよ。」とアドバイスをくれました。今ならインターネットですぐに見つかるアドバイスかもしれませんが、当時は「そんな簡単なことだったの?」とすごく感動したのを覚えています。

私が行っていたエクサンプロバンスの語学学校には日本人も多くいて、日本人だけの発音の授業もありました。ある日の授業で、日本人の耳には「R」と「L」の違いを聞き分けるのが難しいという話がありました。

「欧米人には「R」と「L」が耳の中の別々の穴に入るのに対して、日本人は「R」も「L」も耳の中の同じ穴に入ってしまいます。」

「み・・・耳に穴が開いてるんですか??」
と素直に驚く私に「例えば、という感じです。本当の穴はありません。」

「ネイティブたちは小さいときからの慣れなどにより簡単に聞き分けらますが、訓練でもある程度は聞き分けられます。耳がいい人、特に音楽をやっている人は発音もうまくなる人が多いです。過去の生徒の中でも、特に発音がきれいになった学生は音大からの留学生などがいました。」

そして20年以上たった今、日本語教育の勉強を始めて、この「穴」の正体に少し近づいた気がしています。

音声上の最小単位は単音(英語:phone*)と呼ばれ、一般的には国際音声記号(IPA: International Phonetic Alphabet)で表します。リンゴの英語、appleなら、 [ǽpl]と表す発音記号のことです。(* phoneの語源はギリシャ語の「音声」。電話のtelephoneのphoneも語源は同じです。)

これに対して意味の違いに関わる最小の音声的な単位は音素(英語:phoneme)と呼び、/n/, /g/, /d/ のように/ /で表します。

例えば英語のcollection とcorrectionは、[kəlékʃən] と[kərékʃən] 。「収集」と「修正」となり、それぞれ意味が違います。この [l]と[r]という音を、英語で意味の違いをなしている音として/l/と/r/で表したのが音素です。英語には/l/と/r/の違いで意味が違う言葉はたくさんありますが、以下に一例をあげます。

fly fry
light right
long wrong
collect correct
glass grass
lighter writer
locker rocker
(参照:https://www.englishclub.com/pronunciation/minimal-pairs.htm

1か所の音の違いで意味が違う言葉のペアを「ミニマルペア」と呼び、外国語の学習時にもよく使われます。日本語だったら「缶」と「癌」、「サル」と「ザル」などが挙げられます。1つの音により意味がガラリと変わる音、それが音素です。上の日本語の例でいうと/k/と/g/、/s/と/z/により意味が違っているのでそれぞれが音素になります。

ところが、英語では全く意味が違う[l]と[r]を含む二つの言葉も、カタカナで書いてみるとどうでしょう。「フライ」「ライト」「ロング」「コレクト」「グラス」「ライター」「ロッカー」・・。そうです。日本語で書くと同じカタカナになってしまいます。日本人の/r/では、[l]と[r]という音(発音)の違いを表現できないので、カタカナにすると同じ「ラリルレロ」になってしまうのです。

日本語の/r/と英語の/r/は同じ記号で表しても、範囲が異なります。これがその昔きいた「[l]と[r]も同じ穴に入る」の正体なのかもしれません。

ちなみに日本語のラの発音は[la]でも[ra]でもなく、歯茎はじき音 [ɾa](rのてっぺんがない記号)です。でも、外国人が話す巻き舌のラでも、lamen でもramen でも中華料理店にいけば「ラーメン」だとわかります。


日本人は、ラーメンの「ラ」をいろんな発音で言われても「なんかちょっと違うかな~、でもま、いいか。」くらいに聞き流すことがほとんどです。でも「ダーメン」とか「ナーメン」と言われると、「違うでしょ!」と突っ込んでしまいがち。日本人にとって/ラ/は/ダ/や/ナ/とは明らかに違うからです。

例えば朝鮮語では[g]と[k]が意味の区別に役立たず、/g/には[g]と[k]が両方とも含まれるそうです。また同様に他の言語では、[d]と [t]、 [b]と [p]の区別がないものもあるので、一週間が「いっしゅーがん」、池袋が「イケプクロ」、妹が「いもーど」となることがあるとのこと。外国語の発音学習で苦労するのは同じですが、苦労するポイントはそれぞれの母語により少しずつ違います。

さて、最初にもどってsiとchiの違い。これは日本人のサ行の発音に原因がありました。日本語のサ行の発音は下記のように表されています。

「シ」だけ違う発音です。このシの発音は、本来「シャ行(シャ[ɕa]、シ[ɕi]、シュ[ɕɯ]、シェ[ɕe]、ショ[ɕo])」の発音ですが、現在の発音ではサ行に借り出されています。ちなみに[s]の発音は歯茎を摩擦して出す音(「スー」という時に使う音)、[ɕ]の発音は歯茎より少し口の奥の上部に息を摩擦させて出す(「シー」という時に使う音)です。

「siをスィと発音してみよう」のように意識するだけで「si」の発音は結構簡単に調整できます。最初の「靴」を表すフランス語「chaussures」も「ショスュール」と意識して発音すればそこまで笑いをとることにはならなかったでしょう。

最近は[fi] の発音も「フィ」、[vi]も「ヴィ」など、カタカナ表記を工夫して近い音を表現できるようになってきました。そして最近の子供向けの英語テキストにあるカタカナもずいぶん以前のカタカナとは違っています。将来、[l]と[r]もカタカナ表記で分けられる日がくるかもしれませんね。(鍋田)

 

<めざせ語学マスター>シニフィエとシニフィアン

2021年7月6日

以前勤めていた翻訳会社でのある日の午後。
「もちろん、シニフィエとシニフィアンの違いは判るね?」
突然社長に質問されたことがありました。
「signifier の過去分詞と現在分詞ですね!」
と答えると
「(まさか知らないの?)!!」
と、ぎょっとされたのを思い出します。

言語学をかじった人にはアタリマエの用語のようですが、ただ語学だけを勉強してきた人には「?」です。


ソシュール

スイスの言語学者、フェルディナン・ド・ソシュール(Ferdinand de Saussure 1857-1916)は、ジュネーブ大学で言語の本質と言語学について教えていたそうです。それを教え子たちが「一般言語学講義」としてまとめて出版しました。本人は講義を行ったあとに病気で亡くなってしまったそうです。

彼は言語を「通時態(仏語: diachronie, 英語:diachrony)」と「共時態(仏語:synchronie、英語:synchrony)」にわけました。通時態は言語の歴史的な変化であり、共時態は特定の時代における言語の状態です。彼は言語の変遷などは大事だとしながらも、どうやって言語が他人に伝わるかというシステムを解明しようとしました。歴史的なことはひとまず横においておき、現在使われている言語の仕組みを集中して研究しました。

今使われている言語=共時態(フランス語:synchronie, 英語:synchrony)

 

通時態( フランス語:diachronie, 英語:diachrony)

では今私たちが話している言語は全て研究の対象かというと、そうではありません。彼はまず人間のもつ普遍的な言語能力・シンボル化活動をランガージュ(フランス語:langage、英語:language〉とよび,これを社会的側面であるラング(フランス語:langue、英語:language〉(=社会制度としての言語)と個人的側面であるパロール(フランス語:parole、英語: speech〉(=現実に行われる発話行為)とに分け、パロールは言語学の対象から外しました。(注意!フランス語のlangue もlangage も英語になると両方ともlanguageになってしまいます。英語ではラングをparticular language、ランゲージをパロルを使える能力、つまりspeech abilityのように、説明をつけて分けているようです。)


パロールのイメージ (個人の出す音の集まり)

ラングのイメージ (記号的)

なぜ人は人に「ニンジン」を買ってきて、と言えば、相手は「ニンジン」を買ってこれるのか。それは、その単語を使って相手が同じものを想像できるという約束なしにはできないことです。同じ言語を使う人は、同じ音と意味を結びつけるシステムを頭に持っているのです。

どうやったら「ニンジン」という言葉で同じイメージを持てるのか。
彼は言語を「記号(フランス語:signe、英語:sign」ととらえました。「意味」は「ニンジン」のような言語という音や図形で表すことができます。

意味=シニフィエ(フランス語:signifié、英語:signified)

記号=シニフィアン(フランス語:signifiant、英語:signifier)「ニンジン」という音、文字

この意味と記号がそれぞれの頭で結びつかない限り、相手にメッセージは通じません。

まるでモールス符号・・

また、シニフィエとシニフィアンの間に自然な関係はありません。これを「恣意性」(フランス語:arbitraire du signe, 英語: arbitrariness of the sign)といいます。

別に「ABC」でもよかったのかもしれません。
実際、同じ対象(signifié) に対して、言語によって呼び方はかなり違います。

猫(neko)は 英語でcat(キャット), 中国語では猫(マオ),  モンゴル語ではМуур(ムール)、韓国語では고양이(コヤギ)。

犬(inu)は 英語でdog(ドッグ),  フランス語でchien(シヤン),  スペイン語でperro(ペロ)、中国語では狗(ゴウ)。

馬(uma)は 英語でhorse(ホース),  中国語は马(マー)、ロシア語ではЛошадь(ロシャチ)、韓国語では말(マル)。

このような「シーニュ」「シニフィアン」の概念は、言語に関する理論にとどまらず、セミオロジー、記号論(フランス語:sémiotique 、英語: semiology)という新しい学問分野として発展していきました。それが形態素分析などにつながり、今のAI翻訳にも生かされていると思うと感慨深いです。

さて、最初に戻りますが、翻訳するときには、シニフィエ、つまり、そのものを理解して行う必要がある、というのが上司の言葉の続きでした。シニフィアンは言語によって恣意的につけられているが、言葉の表面や、言語の入れ替えだけでとらえずに、本質(シニフィエ)を理解しないと(たとえばそれがボイラーやコンプレサーであっても)良い翻訳はできない、ということでした。

今更ですが、深い言葉ですね。(鍋田)

<めざせ語学マスター>文を分ける 文節&語&形態素

2021年6月30日

文を分ける


学校文法では、「文」を分ける方法を習います。例えば

「今日私は遅刻しました。」

という文を分けてみます。

「ネ」を入れてもおかしくなければ文節に分かれるそうなので、
「今日(ネ)、私は(ネ)、遅刻しました(ネ)。」
と文節にわけてみました。

さらに「語(単語)」にも分けてみます。
「今日、私 は 遅刻し まし た。」

学校では、
自立語(文節の最初に来る単語):今日 私 遅刻し 
付属語(つねに自立語のあとに付けて用いられる単語):は を まし た
という分け方をしています。

自立語はさらにいろんな品詞にわけられます。

名詞:
副詞:今日(今日という単語は名詞でもあり、副詞的用法もあるようで、今回は副詞)
動詞:遅刻する

付属語は助詞と助動詞に分けられます。
助詞:
助動詞:まし(なぜなら「まし」は「ませ」「ます」など活用する。)
    た(「た(だ)」も「たら」や「たろ」「だろ」と活用する)

ここまでだけで息切れしそうになります。

品詞マスターというiphone用アプリを使いました。このアプリ、学校文法と言語学的な解析を選べるんですね。すごい!・・でもどうしてここまで分ける必要があるのかちょっと疑問(;’∀’)。)

しかし、実はもっと分けられます。
ローマ字に分けたり、発音記号に変換したりすればさらにバラバラにできそうです。

Kyō, watashi wa chikoku o shimashita.

しかし、この一つ一つの発音([k]や[sh]など)に意味はありません。
そこで、意味のある区切りだけを残すところまでの分解にします。

今日(名詞) |(記号)| (名詞) | (助詞) | 遅刻(名詞) | (動詞)| まし(助動詞)| (助動詞)|(記号)」

「遅刻する」という動詞は「遅刻」と「する」に分けられてしまいました。
語と形態素の違いはなんでしょうか。
形態素とは「最小の記号」、もうそれ以上小さく区切ると意味を表すことができない単位だそうです。例えば「無遅刻無欠席」は一つの単語ですが、これも分解して、「無 | 遅刻 | 無|欠席」のようにわけます。限りなく意味として成立しそうなところまで分解していったものが形態素です。(ちなみに、言語は記号の体系だといって現代言語学の基礎を気づいたのはソシュール(1857-1913)です。)

形態素は英語でmorpheme。
単語(word)と形態素(morpheme)は違っていて、例えば複数形を表す単語についた「s」(chairs のs)は形要素になるので、ここには一つの単語の中に2つの形態素が入っていることになります。

さらに形態素は「内容形態素」と「機能形態素」に分かれます。
内容形態素(具体的な内容を示す形態素):今日 私 遅刻 し 
機能形態素(活用語尾のような文法的な機能を表す形態素):は を まし た

この「遅刻する」の「する」は「」となっていますが、他の「見る」や「食べる」などの動詞にある、活用しても変わらない語幹がありません。(「見(語幹)+る(語尾)」「食べ(語幹)+る(語尾)」)。しない、します、する、するとき、すれば、しろ、せよ、と「さしすせ」と変わるので「し」は「する」の異形態と呼ばれます。「はな(花)」は「草花(くさばな)」のように「バナ」になることもありますが、これも「はな」の異形態(allomorph)。

カエルがいっぴき、にひき、さんびき、よんひき・・・の「ぴき」「びき」なども「ひき」という助数詞「匹」の異形態。
似たような例としては、英語の複数形(s)にも、異形態素{s/z/ɪz}があります。 「hats」の[‘hæts]、「dogs」の[‘dɒgz]、「boxes」の[‘bɒksɪz]のように、実はそれぞれ発音が違っています。これも異形態と呼ぶそうです。

さらに、形態素にはそれだけで文章を作れる「自由形態素」、他の形態素と一緒に使われないといけない形態素を「拘束形態素」と呼びます。ひき、びき、ぴき、もそれだけだと何のこと?となるので拘束形態素です。それなら上の内容形態素(今日、私、遅刻、し)は全部自由形態素、機能形態素(は、を、まし、た)は全部構想形態素です。

いろいろありすぎてクラクラします。(だから合格しないのでしょうか。)

最近流行しているAI翻訳は、自然言語処理(Natural Language Processing)に基づいて行われています。「自然」だからと、勝手にファジーなイメージをもってはいけません。実際は、人間の言語(自然言語)を機械で処理し、内容を抽出するための処理で、AI様がきちんと作動させるためには、自然な言語を最小限の単位まで分解した大量のデータを用意する必要がある、という、恐ろしく機械的な作業です。私がここで説明するにはまだまだ知識が足りないので、詳しくは自然言語処理について書かれたサイト(https://ledge.ai/nlp/など)をご覧ください。ソシュールは、果たして彼の「記号論」がGOOGLEなどによってニューラル翻訳に生かされるなんて思っていたんでしょうか。もう少しソシュールについても調べてみたくなりました。

 

<めざせ語学マスター> やさしい日本語

2021年6月22日

昨年の試験の最後には最近流行している「やさしい日本語」についての意見を問う筆記問題が出ました。「やさしい」と聞くとホッとしそうですが、「複言語主義」、「言語権」、「規範主義」といったキーワードをそれぞれ意味が分かるように使うこととあり、結局私にはまったくやさしくなかったです。そういえば最近弊社にもご依頼時に「英語とスペイン語以外に、“やさしい日本語”にもできますか?」という問い合わせがくるようになっています。さて、「やさしい日本語」とは何のことでしょうか。

「やさしい日本語」とは、1995 年の阪神・淡路大震災がきっかけに考案されたものです。震災時、日本にいた多くの外国人が、日本語を十分に理解できず、必要な情報を得られずに被害を受けました。このようなことが再び起こらないために、災害発生時、日本語が不慣れな外国人でも早く正しい情報を得られるようにと、やさしい日本語が使われるようになったのです。語彙的には日本語能力試験出題基準3、4級(最も初級)レベルが基準だそうです。

また、「やさしい日本語」は日本語がやさしいだけではなく、下のような決まりがあるので注意です。必ずしも「やさしい」からって簡単に書けるものではありません。

 一文を短くして、文の構造を簡単にする。(1文1情報、24拍程度、主語と述語を一組だけにする)
 難しい言葉を避け、簡単な言葉を使う。
 災害時によく使われる言葉や、知っておいたほうがよいと思われる言葉は、そのまま使う。 その言葉の後に、かっこ書き〈 〉で意味を補足する。 (例:「消防車しょうぼうしゃ」 → 消防車しょうぼうしゃくるま
 外来語(カタカナ語)はなるべく使わない。使うときは注意する。
 擬態語や擬音語は避ける。
 動詞を名詞化したものは分かりにくいので、できるだけ動詞文にする。(揺れがある→揺れる)
 あいまいな表現は避ける(×おそらく津波がきます。→〇津波がくるかもしれません。)
 二重否定の表現は避ける(×使えないことはない。→〇使えます。)
 文末表現はなるべく統一する(「・・・てください。」「・・・てください。」。)
 ローマ字は使わない。
 時間や年月日を外国人にも伝わる表記にする。 (西暦)
 漢字の使用量に注意する(1文に3,4字程度)。 全ての漢字にふりがなをふる。
 文は、文節ごとに「分かち書き(余白を空けて区切る)」にして、言葉のまとまりを認識しやすくする。 (「関東地方で大きい津波がありました。」→「関東(かんとう)地方(ちほう)で 大きい 地震(じしん)が ありました。」)
 絵、写真、図表などを使って分かりやすくする。 (絵は単純に、一目でわかるものを)
 同音または似ている語を避ける(読み原稿)。

普通の日本語を「やさしい日本語」に変換してくれるツールや(やんしす:やさしい日本語支援システム )、ガイドラインがインターネットで多く検索できます。

文化庁 (在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン
静岡県 県民生活局 多文化共生課 (静岡県庁 「やさしい日本語の手引き」
島根県 しまね国際センター (「やさしい日本語」の手引き
出入国在留管理庁 (在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン

「やさしい日本語」のキャラクター、ことりん

しかし、ひとつひとつの単語を確認しながら「やさしい日本語」に置き換えていくのは簡単ではありません。このような作業は翻訳するのはAIにはもってこいの作業かと思います。AIは言語を最小単位に分けて作業するのが得意です。実際、「普通の日本語」→「やさしい日本語」→「外国語」のほうがきっときれいな文章に仕上がるんじゃないでしょうか。

試しに上の「やんしす」で、昨年10月26日の菅首相の所信表明演説の一部をを分析してみました(第203回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説)

 

今回の感染症では、行政サービスや民間におけるデジタル化の遅れ、サプライチェーンの偏りなど、様々な課題が浮き彫りになりました。デジタル化をはじめ大胆な規制改革を実現し、ウィズコロナ、ポストコロナの新しい社会をつくります。

まずこれが細かい単語にわけて解析されます。

(1):今回の  感染症では、  行政  サービスや  民間における  デジタル化  遅れ、  サプライ  チェーン  偏りなど、  様々  課題  浮き彫りに  なりました。

(2):デジタルを  はじめ  大胆な  規制  改革を  実現し、  ウィズ  コロナ、  ポスト  コロナの  新しい  社会を  つくります。

解析は以下のように出てきます。

文(1)
今回: 難しい単語です。可能なら簡単な単語に置き換えましょう。
感染: 難しい単語です。可能なら簡単な単語に置き換えましょう。
: 難しい単語です。可能なら簡単な単語に置き換えましょう。
行政: 難しい単語です。可能なら簡単な単語に置き換えましょう。
サービス: 難しい単語です。可能なら簡単な単語に置き換えましょう。
民間: 難しい単語です。可能なら簡単な単語に置き換えましょう。
における: ほとんど理解してもらえません。可能なら簡単な単語に置き換えてください。
デジタル: ほとんど理解してもらえません。可能なら簡単な単語に置き換えてください。
: 難しい単語です。可能なら簡単な単語に置き換えましょう。
遅れ: 難しい単語です。可能なら簡単な単語に置き換えましょう。
サプライ: ほとんど理解してもらえません。可能なら簡単な単語に置き換えてください。
チェーン: ほとんど理解してもらえません。可能なら簡単な単語に置き換えてください。
偏り: ほとんど理解してもらえません。可能なら簡単な単語に置き換えてください。
様々: 難しい単語です。可能なら簡単な単語に置き換えましょう。
課題: 難しい単語です。可能なら簡単な単語に置き換えましょう。
浮き彫り: ほとんど理解してもらえません。可能なら簡単な単語に置き換えてください。
文が長すぎます(72拍)。文を分割してください。 「~など」のような例示はあいまいなので、可能な限り避けてください。文(2)
デジタル: ほとんど理解してもらえません。可能なら簡単な単語に置き換えてください。
化: 難しい単語です。可能なら簡単な単語に置き換えましょう。
大胆: 難しい単語です。可能なら簡単な単語に置き換えましょう。
規制: 難しい単語です。可能なら簡単な単語に置き換えましょう。
改革: 難しい単語です。可能なら簡単な単語に置き換えましょう。
実現: 難しい単語です。可能なら簡単な単語に置き換えましょう。
ウィズ: ほとんど理解してもらえません。可能なら簡単な単語に置き換えてください。
コロナ: ほとんど理解してもらえません。可能なら簡単な単語に置き換えてください。
文が長すぎます(53拍)。文を分割してください。

やんしすの説明には以下のように書かれています。

「「分析結果」のところには、入力した文の単語ごとの難しさが色で表示されます。青は使っても大丈夫な単語、ピンクは「難しいので初級者には理解されない可能性が高い」単語、赤は理解しにくい難しい単語です。これらのレベルは、日本語能力検定試験の級に基づいて判定されていますので、日本語学校などで日本語教育を受けた外国人ならば、ほぼこの理解度に沿っていると考えてよいでしょう。「やんしす」では、日本語能力検定の4級・3級の単語を青で、2級・1級の単語をピンクで、それ以外の単語(固有名詞を除く)を赤で表示しています。」(やんしすの説明)

ではこれをどうやったら「やさしい日本語」にできるんでしょうか。

とりあえず難しい言葉を平易にし、文章をなるべく簡潔にし、「やんしす」で赤字やピンクの文字をなくすようにして変換していきます。カタカナは避けた方が良いようですが、コロナやデジタルは避けられない気がします。こんな感じになるんでしょうか・・・。

あたらしい コロナウイルスでは、政府せいふの サービスや 企業きぎょうの デジタルが おくれていることがわかりました。また、ものの ながれが うまく いかない などの 問題もんだいが みつかりました。これからは デジタルをして、法律ほうりつを 見直みなおして、コロナウイルスが あるときも、なくなった あとも あたらしい 社会しゃかいを つくります。

伝えるウエブというやさしい日本語に試訳できるサイトがありました。試した結果が下記になりますが、詳しい説明までついてすごいです。(試訳は無料ですが、有料サービスもあるようです。)

今回こんかいひとからひとにうつる病気びょうきでは、行政ぎょうせいサービスや(役所やくしょなどの公的こうてき機関きかんでない)民間みんかんのデジタルおくれ、サプライチェーンのかたよりなど、いろいろな問題もんだいがはっきりしました。サプライチェーンとは、工場こうじょう材料ざいりょうはこんだり、つくったものをとどけたりすることです。デジタルをはじめおもった規制きせい改革かいかくをじっさいにそうなり、ウィズコロナ、ポストコロナのあたらしい社会しゃかいをつくります。ウィズコロナとは新型しんがたコロナウイルスがうつらないように、をつけてきることです。

 

以前社内で日本語検定1級を目指すスタッフの学習用に、NHKの「やさしい日本語で書いたニュース」を使ってディクテーションなどを行っていました。でも「優しい日本語」がN3やN4級の語彙で作られていたなら選ぶ教材が間違っていたんですね。今更ながら反省。「やさしい日本語」、日本人にはなかなか手ごわいです。

(鍋)

<めざせ語学マスター> 来日外国人の激減について

2021年6月15日

日本語教育能力試験の中には、訪日外客数を問う問題も出てきます。昨年の試験Iの問題15では、2018年に訪日外客数が何人を超えたかを選ぶ問題が出ました。答えは2018年に初めて3000万人を超えたというもの。確かに2019年までは外国人観光客がどこにいってもたくさん見かけられました。

日本政府観光局(JNTO)のホームページには国別、地域別、月別の訪日外客数が出ています。

2020 2019 2018 2017
総数 4,115,828 31,882,049 31,191,856 28,691,073
前年比 -87.1 +2.2 +8.7 +19.3

インバウンド需要がたくさんあり、日本の観光地には日本人より外国人のほうが多いように思えるくらいでした。私たち(翻訳・通訳会社も)も2019年まではガイド通訳や海外への出張する通訳の調整でとても忙しかったです。そう、コロナの影響が出るまでは・・・。

弊社のスローガンは「国境を超えるあなたを応援します」。しかし2020年は国境を誰も超えなくなったときどうするかという新しい問題にぶつかりました。海外出張がなくなり、来日する研修生や観光客がいなくなり、弊社の翻訳を必要としてくださるお客様が海外の調査に行けなくなることで翻訳の需要まで減り・・・。

2021年は4月の途中までの統計で来日外客数は 77,100人、対2019年比98%減と出ています。年末には改善していることを心から祈ります。
ちなみに上と同じ時期、日本に最もよく来ている国籍ベスト5は以下の通りでした。やはり中国系の方の来日が一番多いんですね。(それにしても中国と台湾と香港を分けることに問題はないんでしょうか・・・)

2020 2019 2018 2017
1位 中国 
(1,069,256)
中国
(9,594,394)
 中国
(8,380,034)
中国
(7,355,818)
2位 台湾
(694,476)
韓国
(5,584,597)
韓国
(7,538,952)
韓国
(7,140,438)
3位 韓国
(487,939)
台湾
(4,890,602)
台湾
(4,757,258)
台湾
(4,564,053)
4位 香港
(346,020)
香港
(2,290,792)
香港
(2,207,804)
香港
(2,231,568)
5位 タイ
(219,830)
米国
(1,723,861)
米国
(1,526,407)
米国
(1,374,964)

タイからの来日者数はずっと6位でしたが去年アメリカからの来日者数が減って5位に浮上したようです。

同じ問題(問題15 問2)に、2018年から2019年の東アジアからの訪日外客数の変化を問う問題もありました。中国、台湾、香港、米国からは増えていますが韓国からの渡航が25.9%減っています。日韓関係の冷え込みのせいだそうです。

そうか、2019年に韓国から来る人は減ってたんだー(コロナによる全ての来日数の激減に比べたら少しですが)と新鮮に驚く私。韓国と日本の関係が冷え込んだ翌年の2020年、私はNetflixの「愛の不時着」を全部見ました。妹が「お姉ちゃん、過去いろんな俳優がいたけれど、これほどパーフェクトな俳優はいないよ!」と大宣伝してくれたおかげです。確かに、そのあと私の韓国(と北朝鮮)の見方がかなり変わった気がします。北朝鮮の軍事パレードを見るだけでもちょっとドキドキするようになりました。

日本政府観光局(JNTO) の統計によると韓国へ行く日本人の数は(2017年) 2,311,447人 (+0.6%)、(2018年) 2,948,527人 (+27.6%)、 (2019年)3,271,706人 (+11.0%)と、同時期に増えています。

これにはドラマの影響もあるんだろうなと思うのでした。ソフトパワーの力は馬鹿にできません。

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