AI時代になくなる職業

先日のブログで取り上げた『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』では、オックスフォード大学の研究チームが2013年に発表した予測が紹介されています。この研究では、コンピューター(AI)の発展によって「10年後から20年後に残る仕事」と「なくなる仕事」について詳しく述べられています。
★★ 10~20年後になくなる職業トップ25 ★★
(原点(“The Future of Employment : How Susceptible are Jobs to Computerisation?”September 17, 2013.)ではワースト25位:678位~702位)。
| 1 |
テレマーケター(Telemarketers) |
| 2 |
不動産登記の審査・調査(Title Examiners, Abstractors, and Searchers) |
| 3 |
手縫いの仕立て屋(Sewers, Hand) |
| 4 |
コンピューターを使ったデータの収集・加工・分析(Mathematical Technicians) |
| 5 |
保険業者(Insurance Underwriters) |
| 6 |
時計修理工(Watch Repairer) |
| 7 |
貨物取扱人(Cargo and Freight Agents ) |
| 8 |
税務申告代行者(Tax Preparers) |
| 9 |
フィルム写真の現像技術者(Photographic Process Workers and Processing Machine Operator) |
| 10 |
銀行の新規口座開発担当者(New Accounts Clerks) |
| 11 |
図書館司書の補助員(Library Technicians) |
| 12 |
データ入力作業員(Data Entry Keyers) |
| 13 |
時計の組立・調整工(Timing Device Assemblers and Adjusters ) |
| 14 |
保険金請求・保険契約代行者(Insurance Claims and Policy Processing Clerks) |
| 15 |
証券会社の一般事務員(Brokerage Clerks) |
| 16 |
受注係(Order Clerks) |
| 17 |
(住宅・教育・自動車ローンなどの)融資担当者(Loan Officers ) |
| 18 |
自動車保険鑑定人(Insurance Appraisers, Auto Damage ) |
| 19 |
スポーツの審判員(Umpires, Referees, and Other Sports Officials) |
| 20 |
銀行の窓口係(Tellers) |
| 21 |
金属・木材・ゴムのエッチング・彫刻業者(Etchers and Engravers) |
| 22 |
包装機・充填機のオペレーター(Packaging and Filling Machine Operators and Tenders) |
| 23 |
調達係(購入アシスタント)(Procurement Clerks) |
| 24 |
荷物の発送・受け取り係(Shipping, Receiving, and Traffic Clerks) |
| 25 |
金属・プラスチック加工用フライス盤・平削り版のオペレーター(Milling and Planing Machine Setters, Operators, and Tenders, Metal and Plast) |
(出展)日本語 AI vs. 教科書が読めない子どもたち (松尾豊「人工知能は人間を超えるか」(角川EPUB選書))
(原点)C.B.Frey and M.A.Osborne, “The Future of Employment : How Susceptible are Jobs to Computerisation?”September 17, 2013. *英語の職業名は上記原点より。
ホワイトカラーの仕事もAIに奪われる時代へ
注目すべき点は、AIの影響を受ける仕事の多くが、かつて「ホワイトカラー」と呼ばれていた事務系の職種であることです。マニュアルに従い、決められたルールのもとで作業を進める仕事が多く含まれています。
オックスフォード大学の研究チームは、アメリカの職業を702種に分類し、その約半数がAIによって消滅する可能性があると予測しました。さらに、全雇用者の47%が職を失う恐れがあると指摘しています。
また、新井紀子氏は2010年に出版した著書『コンピュータが仕事を奪う』の中で、AIの進化により、10年から20年の間に働く人々の半数が職を奪われる可能性があると予測していました。しかし、驚くべきことに、出版直後に書店で確認すると、その本はSFコーナーに置かれていたそうです。
技術革新と消える仕事
歴史を振り返ると、新しい技術の登場によって仕事が消えるのは避けられないことです。ATMの普及によって銀行の窓口業務は減少し、写真のデジタル化により街角のDPE(現像・プリント)ショップの多くは姿を消しました。しかしAIの影響はこれまでの技術革新とは異なります。はホワイトカラーの仕事が、20年程度で半減する可能性があるというのです。新井氏は、これは今までの歴史にはなかった規模の変化だと警鐘を鳴らします。
AIの進化がもたらす現実
この予測が発表されてからすでに10年以上が経過しましたが、現状は確かにリストの予想に近づいています。
AIは膨大なデータを高速で分析し、最近では生成AIの登場によって、単なるデータ処理にとどまらず、プレゼン資料の作成やレポートの自動生成まで可能になりました。
銀行の窓口の受付スタッフは減り、大きな支店が駅前から撤退し、オフィスビルの上階に異動するケースも出てきました。まるで人が来ることを拒んでいるかのようにも見えます。様々な職場でスタッフの数も減少しています。先日電話をとったら、アンケ―トの依頼電話さえも機械音声が対応していました。
AIがもたらす変化は、もはや「未来の話」ではなく、すでに私たちの日常に浸透しつつあるのです。
AI時代に生き残る仕事とは?
AIの進化によって多くの仕事が消えると予測される一方で、生き残る仕事もあります。オックスフォード大学の研究をもとに、(2013年時点で)10年~20年後も残ると考えられていた職業トップ25を見てみましょう。
★★10年~20年後まで残る職業トップ25★★
| 1 |
レクリエーション療法士(Recreational Therapists) |
| 2 |
整備・設置・修理の第一線監督者(First-Line Supervisors of Mechanics, Installers, and Repairers) |
| 3 |
危機管理責任者(Emergency Management Directors) |
| 4 |
メンタルヘルス・薬物関連ソーシャルワーカー(Mental Health and Substance Abuse Social Workers) |
| 5 |
聴覚訓練士(Audiologists) |
| 6 |
作業療法士(Occupational Therapists) |
| 7 |
歯科矯正士・歯科技工士(Orthotists and Prosthetists) |
| 8 |
医療ソーシャルワーカー(Healthcare Social Workers) |
| 9 |
口腔外科医(Oral and Maxillofacial Surgeons) |
| 10 |
消防・防災の第一線監督者(First-Line Supervisors of Fire Fighting and Prevention Workers) |
| 11 |
栄養士(Dietitians and Nutritionists) |
| 12 |
宿泊施設の支配人(Lodging Managers) |
| 13 |
振付師(Choreographers) |
| 14 |
セールスエンジニア(Sales Engineers) |
| 15 |
内科医・外科医(Physicians and Surgeons) |
| 16 |
教育コーディネーター(Instructional Coordinators) |
| 17 |
心理学者(Psychologists, All Other) |
| 18 |
警察・掲示の第一線監督者(First-Line Supervisors of Police and Detectives) |
| 19 |
歯科医(Dentists, General) |
| 20 |
小学校教師(特別支援教育を除く)(Elementary School Teachers, Except Special Education) |
| 21 |
医学者(疫学者を浮く)(Medical Scientists, Except Epidemiologists) |
| 22 |
小中学校の教育管理者(Education Administrators, Elementary and Secondary School) |
| 23 |
足病医(Podiatrists) |
| 24 |
臨床心理士・カウンセラー・スクールカウンセラー(Clinical, Counseling, and School Psychologists) |
| 25 |
メンタルヘルスカウンセラー(Mental Health Counselors) |
(出展)日本語 AI vs. 教科書が読めない子どもたち (松尾豊「人工知能は人間を超えるか」(角川EPUB選書))
(原点)C.B.Frey and M.A.Osborne, “The Future of Employment : How Susceptible are Jobs to Computerisation?”September 17, 2013. *英語の職業名は上記原点より。
AIに奪われにくい仕事の特徴とは?
上記のリストを見てわかるように、AI時代でも残る仕事には「コミュニケーション能力や理解力が必要な仕事」や「介護などの肉体労働」が多く含まれています。AIが苦手とされるのは、高度な読解力・常識・柔軟な判断が求められる分野です。
AIはデータ処理に優れていますが、応用力や創造性に欠け、決められたルールの範囲でしか動けません。そのため、1を聞いて10を知る能力や、枠にとらわれない発想が求められる仕事は、AIに代替されにくいと考えられています。
しかしここで問題になるのが、果たして多くの人間がそのような読解力や常識、柔軟性や発想力を持っているかということです。新井紀子氏は残念ながら日本の中高生の読解力は危機的な状況にあると指摘しています。
誰もがAI時代に適応できるわけではない
AIの進化によって生まれる新しい仕事に、すべての人が就けるわけではありません。さらに、上記のリストにあるような職業にすぐに就ける人も限られています。結果として、失業者が増加し、社会が大きく混乱する可能性があると筆者は警鐘を鳴らします。AIは私たちの生活を便利にする一方で、多くの仕事を奪う存在でもあります。「AIによって世の中がバラ色になる」と楽観視するのは危険かもしれません。
【通訳・翻訳者の前後の順位】
ちなみに通訳・翻訳者は10年~20年後まで残る職業トップランキングでは、702職種中265位という意外な位置にランクインしていました。その前後と合わせてみてみましょう。
| 263 |
機械工学技術者(Mechanical Engineering Technicians) |
| 264 |
梱包・包装作業員(手作業)(Packers and Packagers, Hand) |
| 265 |
通訳・翻訳者(Interpreters and Translators) |
| 266 |
ホームヘルパー(Home Health Aides) |
| 267 |
椅子張り職人(Upholsterers) |
この順位を見ても、なぜ通訳・翻訳者がこの位置にあるのかはっきりしません。もっと「代替される職業」に近いと考えられそうですが…。
機械翻訳がほとんどの作業をしてくれるけれど、完全ではないため人間が細部をチェックしなければならない。その意味では、翻訳の仕事もある種の肉体労働と言えるのかもしれません。
AIの進化についていけない人々はどうなるのか?
AIの進化が急速に進む中で、「AIをうまく使いこなす人」と「AIに適応できない人」の間に大きな格差が生まれる可能性があります。もしAIによって職を奪われた人々が、「AI反対」の声を強めていったら…?
いつか「反AI革命」が起こる日が来るのかもしれません。(ただ、残念ながら勝てる見込みは高くないだろうと思います。)

最後に
今回のブログの日本語テキストを、ChatGPTにチェックしてもらいました。すると、私の元の文章を修正するだけでなく、テキスト中赤文字で示された「AIがもたらす変化は、もはや「未来の話」ではなく、すでに私たちの日常に浸透しつつあるのです。」 や 「AIは私たちの生活を便利にする一方で、多くの仕事を奪う存在でもあります。」 といった、新たな文章が追加されていました。
生成AIは、このように意図しない修正や追記を行うことがあるため、少し怖さを感じます。そして、今回追加された文章の内容そのものが、まさにAIの影響の大きさを実感させるものだったという点でも、考えさせられる結果となりました。
ついでにChatGPTに下のような質問をしてみました。
「ところで本当に通訳翻訳の仕事は残ると思う?」
ChatGPTの答えは下記の通りでした。
| いい質問ですね!通訳・翻訳の仕事は完全になくなることはないと思いますが、今の形のまま残るかどうかは別の話です。
機械翻訳はどこまで進化するのか?
最近のAI翻訳(DeepL、Google翻訳、ChatGPTなど)の精度は飛躍的に向上しています。特に一般的な文章や定型的なビジネス文書では、機械翻訳+ポストエディットで十分な品質を出せる場合も増えています。
実際、企業の翻訳業務では「まず機械翻訳を使い、それを人間が修正する」スタイルが主流になりつつあります。コスト削減の観点からも、人間がゼロから翻訳する機会は減っていくでしょう。
それでも通訳・翻訳が必要な場面は?
一方で、以下のようなケースでは機械翻訳がまだまだ人間に及ばないと考えられます。
1. 高度な専門分野(法律・医療・文学など)
法律や医学、契約書、研究論文など、専門知識が必要な翻訳はAIだけでは難しいです。翻訳には、単に単語を置き換えるだけでなく、文脈を理解し、適切な表現を選ぶスキルが必要だからです。
文学や映画の字幕翻訳も同様で、ニュアンスや文化的背景を汲み取る力はAIにはまだ難しい課題です。
2. リアルタイム通訳(交渉・会議・イベントなど)
同時通訳や交渉通訳など、瞬時の判断が求められる場面では、人間の通訳者の方が信頼性があります。機械通訳も進化していますが、場の空気を読んだり、相手の意図を汲んで適切な表現を選ぶことは難しいからです。
3. 文化的・感情的なニュアンスを伝える翻訳
例えば広告やマーケティング翻訳、スピーチ翻訳など、感情や説得力を重視する文章は、機械翻訳ではまだ十分に表現しきれません。「翻訳」ではなく「ローカライズ(文化に合わせた最適化)」が求められる仕事は、人間の力が必要です。
結論:翻訳・通訳の仕事はどう変わる?
✅ 単純な翻訳(マニュアル・定型文・ビジネスメールなど)はAIに置き換わる
✅ 専門知識が必要な翻訳、リアルタイム通訳、文化的な翻訳は人間が必要
✅ 人間の翻訳者は「機械翻訳のポストエディット」「高度な専門分野」「クリエイティブ翻訳」にシフトする
つまり、翻訳・通訳の仕事は完全になくならないけれど、形が大きく変わるというのが現実的な見方だと思います!
「翻訳をするだけ」ではなく、「AIを活用してより価値のある翻訳を提供する」スキルが求められる時代になりそうですね。 |
(文:鍋田)
