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<めじろ奇譚> スペインのスペイン語と中南米のスペイン語

2021年6月17日

スペインで話されるスペイン語と、中南米で話されるスペイン語がちょっとだけ違うというのをご存知でしょうか。

スペイン語を憲法上・事実上の公用語としている、または市民の多くがスペイン語を日常的に使っている国や地域は世界に20以上を数えます。
そして、中南米に限ると、現在は以下の国や地域でスペイン語が主な言語として使用されています。

メキシコ、コスタリカ、グアテマラ、エルサルバドル、パナマ、ホンジュラス、ニカラグア、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコ、コロンビア、ベネズエラ、エクアドル、ペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ

これらはかつてスペイン帝国の支配を受けていた地域です。
16世紀に帝国が侵攻して以後、その地でもともと使用されていた先住民族のことばに代わって、スペイン語が広く普及しました。

後年スペイン本土では消えてしまった用法が今も残っていたり、現地で新しい用法が生まれるなどして、スペインのスペイン語と中南米のスペイン語がそれぞれ個性を持つようになりました。

実際にどういう違いがあるのでしょうか?
いくつか具体的な例を紹介します。

① vosotrosとustedes
スペイン語の動詞は主語に応じて6パターンに活用されます。
そのうち、2人称複数形の『きみたち』としてvosotrosという言葉があります。
中南米ではこの2人称複数形が存在せず、代わりに、3人称複数形のustedesが使われます。
スペインではustedesは丁寧語なので、例えば同級生にustedesを使うことはなく、2つの言葉を場面に応じて使い分けますが、中南米では同じ表現になるのです。
◆きみたち(あなたたち)の出身は?
¿De dónde sois vosotros?
¿De dónde son ustedes?

◎ちなみにスペインでは、初対面の相手にもtúを使うことが多いです。大家さんとも、バルのウェイターさんとも、市役所の職員さんともtúで話します。
仕事相手などには最初はustedを使った方が無難かもしれませんが、多くの場合túへすぐに移行します。
日本に生まれると、つい無難に丁寧な言葉を使い続けたくなりますが、かたくなに他人行儀な話し方をされると、寂しい思いをする人が多いみたいです。

② voseo
日本でスペイン語を習うと、『きみ』は、túと教わると思いますが、中南米の一部の地域ではtú の代わりにvosがよく使われます。
そして動詞も、vosに応じてtúとは異なる活用をします。この用法はvoseoと呼ばれています。
◆きみは朝ごはんに何を食べたい?
¿Qué quieres comer para desayuno?
¿Qué querés comer para desayuno?(voseo)

③ loísmo/laísmoとleísmo
スペイン語では『彼/彼女/あなたに』という意味で、leという間接目的語を使います。これを、直接目的語lo/laに置き換えるloísmo/laísmoという傾向が中南米では多く見られます。
◆その奨学金について質問するために、彼に電話するつもりだよ。
Le llamaré para preguntar sobre esa beca. (正しい用法)
Lo llamaré para preguntar sobre esa beca. (loísmo)
反対に、正しくは直接目的語を使うべきところで代わりに間接目的語を使用するleísmoという傾向がスペインでよく見られます。
◆さっき図書館で彼女を見かけたよ。
Hace un rato, le he visto en la biblioteca. (leísmo)
Hace un rato, la he visto en la biblioteca. (正しい用法)

④ 時制の使い方
スペインでは、今から見れば過ぎたできごとであっても、それが今朝や今年のことなど、いまが含まれる時間のなかに位置している場合は、現在完了形を使います。
しかし中南米では同様の場合について話すときは点過去形を使います。
◆ねえ、今朝青色の鳥をみたよ!
Oye, ¡esta mañana he visto un pájaro azul!
Oye, ¡esta mañana vi un pájaro azul!

⑤ 発音の違い
・seseoとceseo
スペイン語には[θ](Thank you.のth)の発音をする言葉がありますが、中南米ではそれらはすべて[s]で発音されます。
taza(陶器のカップ)とtasa(レート)はスペインの発音では区別できますが、中南米では同じ発音になります。

・yeísmo
llとyの発音は、llはリャのリに濁音がついたような音、yはヤとジャの間のような音と、
元々異なる発音で区別されていました。
しかし、このふたつを同じように発音するyeísmoという現象がスペイン語圏の広い地域で見られ、特に中南米では顕著です。両方とも『ジャ』っぽく発音したり、『ヤ』っぽく発音したり、地域によってまちまちですが、アルゼンチンのブエノスアイレス周辺では『シャ』と発音されます。

◎日本でも有名なメキシコのトルティーヤと、スペインのパエリア、実はふたつともllの音を持っているスペイン語です。それぞれtortilla、paellaと書きますが、かな表記はヤとリアで違いますよね。日本語には無いllの音がかな表記しづらい証左だと感じます。
ちなみに、現地では『パエリア』と言ってもあまりわかってもらえないので、『パエジャ』と発音するのがおすすめですよ🥘

(林)

参考:福嶌教隆(2004)『スペイン語の贈り物』現代書館

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