<めじろ奇譚> スペインの新型コロナウィルス感染状況と予防対策 その2

2021年6月24日

コロナの第2波が始まったとき、スペインでどんな生活をしていたか

パンデミックになり、生活が全く変わらなかった人は殆どいないでしょう。スペインにいる友人や親戚達とは常にSNSでつながっていて生活が大変なことが分かっていたので、日本がロックダウンにならなかったことは、嬉しさ半分、不安半分でした。日本ではコロナがそれほど大きな問題になっていなかったため、スペインと同じような厳しい対策が取られなかったのは当然かもしれませんが、GO TO TRAVELキャンペーンまでが実施され、日本が世界で一番自由な国のように感じられたのは想定外でした。来日してから初めて違う世界にいるような感覚でした。

私は家庭の事情で昨年9月中旬から1月上旬まで約3ヶ月間、スペインで過ごしていましたが、その時期に感じた印象をお伝えしたいと思います。スペイン国民にとって、毎週と言っていいほど新たな対策と変更があり、状況を把握するのはかなり難しい印象でした。帰国したのは第2波が始まっていた時期でしたが、そこまで緊迫した状況だとは感じませんでした。第1波以降、少しノウハウも身に付けていましたし、自分の家族と周りの人はコロナ対策を万全にして、緊張感を持って生活していたからかもしれません。

コロナに対してのスペイン人と日本人の行動の違い

しっかりしているな!と思ったのは母親の対策です。スーパーに行かずに、野菜と食材の買い物はオンラインでやって、届いた品物は全部消毒し、乾かしてから、冷蔵庫と押し入れに入れたりしていました。もちろん洋服も同じです。そのうえ、日本でなかなか手入らないFFP3やKN95といったハイスペックのマスクを見つけるたびに買っていました。

一方、20代後半・30代前半の友人や知り合いは、第2波が始まったのに毎日といっていいほど様々な人とレストランや自宅で会ったりしていたので、極力会わないようにしていたこともありました。殆ど両親と実家で過ごしていた私は、たまに自分のメンタルを守るために外出し、近所の公園で地元の数名の友人達とマスクを着用して会っていました。10か月間以上、高齢者の両親と一緒に住み、仕事と買い物以外特に何もやっていない友人、地方出身でマドリードに住んでいて、ずっと地元に帰ってない友人もいました。

スペインと日本の対策の違い

スペインでは日本同様、ソーシャルディスタンスを保つための店舗への入場制限や、飲食店に対する営業時間の短縮要請が行われていました。しかし、比較してみるといくつかのはっきりとした違いもありました。

まず、コロナウイルスに対して、スペインではインフルエンザのような空気感染のイメージを持っている人が多い一方、日本では飛沫感染のイメージが主だと思います。このため、日本でよく見るマスクなしのフェイスシールドや店内のプラスチックのパーティションはスペインや他の国では無効と思われるかもしれません。逆に、スペインのように1.5メートル離れてマスクをしていても、大きな声で喋ったら唾が飛ぶので、日本ではそれでは意味がないと感じる人がいると思います。文化背景と流される情報によって、市民の行動だけではなく、政府の措置も変わりますね。

・在宅ワーク
スペインでもテレワークは推奨されましたが、実際に自宅で仕事できていた方は人口の14,7%のみです。新しい取り組みには抵抗感を示しがちな日本では逆に合計で全体の約39%がテレワークを経験がしているそうです。その中で完全在宅は6.1%のみ、 50%以上の在宅勤務は14.2%、出勤と在宅の割合が半々程度は9.1%、不定期にテレワークするのは10.5%になります。地域性や職業の種類により差はありますが、日本はスペインより、在宅勤務が多かったと言えます。

・ソーシャルディスタンス
スペインは男女関係なく、友達同士でも、よくハグしたり、肩を組んだりする文化なので、ボディタッチが多く、ソーシャルディスタンスを守れない人は日本より多かった気がしました。一方、店舗への入場制限も行われていますので、知らない人とは十分な距離が保たれている印象もありました。

・消毒液
スペインでは基本的に消毒液が店の外に置かれていましたが、なかった店もあったので、自分用の消毒ジェルを携帯する人もかなり見かけました。

・マスク
日本では夏でも常にマスクを着用することに慣れていたので、スペインに戻ってもマスク着用の習慣は変わりませんでしたが、日本とは違って、スペインではマスク着用に関して政府が厳しい対策を取っていて、ルールに従わないと罰金が科せられました。

ルールを守らない人に対する罰則

マスクに関する罰金
・外出中に警察がマスクを着用してない人を見かけた場合、ガリシア州では3,000€~6,000€(約40万円~約80万円)の罰金、マドリード州では基本的に100€(約13,300円)の罰金が科せられました。人数制限が超えた店舗でマスクを外したら、30,000€(約400万円)の罰金が取られる州もあります。
・店内ではマスクの着用が義務化されているので、マスクしていない人はスーパーでも入店を断られることがあります。ルールを無視する客がいたら、警察を呼んで逮捕するというニュースもみました。

今年の3月末に、下記措置が始まりました。
・一人でマスクを外したまま運転したら、100€(約13,300円)の罰金。
・車で同乗者がいて、マスクを外したら、500€(約66,500円)の罰金。
※罰金の対象になるかどうかは、警察官の決定によります。

マスクのみならず、日本では想像できないような法令と罰則もたくさん見られました。
・仕事以外の理由で特定の地域間を移動する際に、移動禁止措置に対して軽微な違反をすれば、100€(約13,300円)から3,000€(約400万円)までの罰金、深刻な犯罪にあてはまる違反をすれば、30,000€(約4千万円)から60,000€(約8千万円)までの罰金になる可能性があります。金額は州によって異なりました。
・夜間外出禁止令があり、マドリードの場合は夕方12時以上自宅でいない場合は、60€(約8千円)から600€(約8万円)までの罰金。

第2波では完全なロックダウン(都市封鎖)がありませんでしたが、感染が世界的に拡大するなか、政府は学校などの教育機関、オフィス、バー、国境などの閉鎖に踏み切りました。故郷の店をみると、倒産していた店の数は東京より多く、コロナが経済に与える悪影響を実感しました。国からの援助が少なく、生活に困っている人が増え、観光と農業が主な産業であるスペインの未来が心配になります。現時点でワクチン接種を受けた人は600万人おり、サンチェス首相は100日後には全体の人口の70%が接種を完了する予定だと述べました。ワクチン接種に対して様々な意見がありますが、今後どのように変わっていくのか、注視していこうと思います。(ホルヘ)

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