<MemoQマニュアル> CATツール:翻訳メモリとは

2021年12月6日

フランシールではCATツールとしてMEMOQを使っています。

この<MemoQプロジェクト>シリーズでは、わかりやすいように、翻訳会社で使っているCATツールとは何か、翻訳メモリとは何か、などを説明していきます。

① CATツールとは何でしょう。

CATツールとは、Computer Assisted Translation(コンピュータ翻訳支援)ソフトのことです。有名なCATツールでは、下のようなものがあります。

TRADOS(ドイツ 1984年創設):最も古くて有名

その後東欧などでもCATツールは新しく開発されました。

MEMESOURCE(チェコ 2010年創設)
MEMOQ(ハンガリー 2006年創設)
XTM CLOUD(イギリス 2002年創設)
OmegaT (無料のCATツール 2000年創設)

どのCATツールも「翻訳テキスト、翻訳メモリ、用語集」を使って翻訳をする、という点で基本は同じです。表示方法も似ています。

(なぜフランシールではMemoQを使うことになったかというと、MemoQの日本担当の三浦さんが数年前に当社にお越しいただき、CATツールに疎かった私たちに根気よく使い方を説明してくださったからです。感謝)

② なぜCATツールを使うのでしょうか。

翻訳会社に持ち込まれる原稿には、バージョンが違うだけでほとんど同じだったり、繰り返しの多い文章がたくさんあったりと、ただ翻訳するだけでなく原稿の分析が必要な書類も多いです。一つ一つ見比べて「ここは新しい、ここは前にあった文章・・」と分けていく作業は大変時間がかかります。また、すでにある文章を新しく訳してしまったら、「同じ原稿なのに2種類の翻訳がある!」という問題が起こってしまいます。

そのような問題を解決したのがCATツールです。CATツールには以下のような機能があり、ただ見ただけでは気づかないようなミスや重複も自動的に検知してくれます。

 繰り返しを自動で入れてくれる
 翻訳メモリがあるので、過去のデータからすぐに似た文章を探してきてくれる
 用語集も作れるし、すでにあればインストールできる。
 翻訳者には新規の箇所を依頼するだけ。
 おまけに同じ原稿なのに違う表現で翻訳すると警告も自動で出てくる。

③ CATツールは機械翻訳機なのか?

CATツールは過去のデータを再利用するためのツールで、機械翻訳ではありません。
それに対して、GOOGLE, DEEPL、ロゼッタなどのテキストを入れると翻訳が出来上がるアプリケーションは機械翻訳と呼ばれます。機械翻訳はMT(Machine Tranlsation)と呼ばれることが多いのですが、以前AI翻訳を開始して有名になったGOOGLE翻訳以外にも現在は多くのAI翻訳が存在します。また、CATツールにMT機能をプラグインさせてメモリ機能と機械翻訳を両方使う翻訳方法も使われています。例として、MemoQにプラグインできるMTとして以下が挙げられます。

Intento
DeepL
Amazon MT
Google MT
Kantan MT
CrossLang
AltLang
Omniscien Technologies
Iconic Translation Machines
Tilde MT
Microsoft TranslatorTM
PangeaMT
Systran
Slate Desktop
Mirai Translator
TexTra MT
Tmxmall MT
Alexa Translations A.I.MT
ModernMT
Google Cloud Translation Advanced
(MemoQ ホームページ)

さらに最近は、翻訳会社で翻訳したメモリもAI翻訳のコーパスの一部として利用する方法も出来つつあります。CATツールもどんどん進化しているんですね。

④ CATツールを使いたくない理由
上記で説明してきたCATツール、こんなに素晴らしいなら常に使うべきだと思うかもしれませんが、実は抵抗も大きいのです。

翻訳コーディネータ(翻訳会社内)の抵抗
扱っている翻訳にほとんど繰り返しがないから必要ない。
PDF原稿が多いから原稿のデータ化が大変
 メモリを作るのに時間がかかるから面倒
CATツールに原稿をインポートする前のプレエディットや翻訳後のポストエディットが大変
そもそも機械が苦手
翻訳ペアが英語じゃない。わざわざメモリにする必要があるか疑問
すぐにエラーが出るから使いづらい
翻訳者がいやがる
翻訳者が他のCATツールを使っているからいやだと断られた

フリーランス翻訳者側
 自分独自の翻訳メモリや用語集を使っているから翻訳会社にCATツールに合わせたくない。
 そもそも新しいツールが苦手。
 今までは自由に翻訳できたのに、制限を付けられるのがいや。まるで高速道路から一方通行の道路に移動させられたみたいだ。
 時間がかかる。
新規の箇所のみの翻訳やポストエディットが増えて収入が減る。

本来はCATツールは繰り返しのあるマニュアルや、例えば2系列あるプラント設備の仕様書、定款や契約書などの定型フォームがある原稿の翻訳に利用価値があります。戸籍謄本や住民票などの法定翻訳は、定型であっても原稿がPDFや紙ベースで文字化しようとすると文字化けしてしまうものや個人情報を多く含むものは(メモリに個人情報も保存されてしまう可能性があるため)CATツールの使用には向いていません。

ただ、対訳データは大切な資産ですが、原稿と翻訳文がバラバラにあってもすぐに利用することは難しく、それらを翻訳メモリ(コーパス)に作り直すためには時間とコストがかかります。やはり、翻訳しながらメモリを作っていく方法は一番効率的です。

最近のCATツールは同じソフトを持たない外部翻訳者にライセンスを貸し出す方法で翻訳が可能になりました。MemoQクラウドもそうです。しかし慣れない翻訳者にとって新しいツールを使うことは翻訳以上に負担が増えることになりかねません。

そこで今回フランシールのMemoQクラウドプロジェクトチームを作り、出来るだけ平易な言葉で(MemoQヘルプ以上に)わかりやすく参照できるマニュアルを作ることになりました。社内、社外スタッフの負担を出来るだけ減らせたらと願っています。また、これから導入を検討している方にもお役にたてたらと思います。

翻訳エージェントと翻訳者、お客様がWINWINの関係になれるような、そんなCATツールの使い方を今後も目指します。

株式会社フランシール MemoQプロジェクトスタッフ

「翻訳メモリとは何か」を説明した動画はこちら

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