今年はフランスやイタリアをはじめ、コロナ禍で外出禁止令が施行された欧州諸国で1957年にノーベル文学賞を受賞したフランス人小説家アルベール・カミュの代表作「ペスト」に対する関心が高まりました。1947年に出版されたこの物語りの舞台は1940年のフランス領アルジェリアのオランという、黒死病に襲われ封鎖された港町です。そういった過酷な状況における人間が経験する不安や恐怖は、新型コロナウイルスによって日常生活の激変に見舞われる現在の人たちの心にも響くところがあったんでしょう。
さて、本題に入りましょう。フランスに毎年「言葉祭り」が開催され、その時に「今年の言葉」が選ばれます。2020年度の「今年の言葉」は、もちろん、「confinement 」です。元々は「閉じ込め」や「隔離」の意味で囚人の状態を表すためによく使われていた単語で、現代は特に原子力事故や化学災害の際の対応措置を指します。ただし、不思議なことに、「ペスト」には、「confinement」や動詞「confiner」は一切出てきません。その代わりに見受けるのは「quarantaine」という言葉です。数字の「40」をフランス語で「quarante」と言うため、フランス語学習者にとっては少し馴染みのある単語かもしれません。「検疫」の意味の「quarantaine」は中世イタリアからきて、当時は感染症が流行している船舶の乗員は40日間上陸できずに船内での待機を余儀なくされていたことが語源になります。病気によって検疫期間が変わるものの、単語は17世紀から変わっていません。
最後に、この度のコロナ禍では14日間の隔離が必要とされていることから、「quarantaine」に倣って「quatorzaine」という単語も使用されるようになっています。感染症関連の文脈で「14日間の検疫」という意味になります。(ノブル)
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