新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大し、大流行となった中で、政府からのソーシャルディスタンスの推奨や要求に応じて、世界中の多くの企業がテレワークを実施するようになりました。新型コロナが流行するより前からテレワークを実施していた企業ではテレワーク実施割合を増やすだけで済んだかもしれませんが、今回の大流行により初めてテレワークを導入する企業も多くあったに違いありません。
統計を比較するとこの効果がよくわかります。日本では、2019年12月時点での(100%実施している人から不定期的に実施している人まで含む)テレワーク実施率が10.3%でした。2021年5月にはこの割合が30.8%にまで上昇していました。[1]
企業や社会全体がテレワークを受け入れる準備ができているかどうかには、国の産業構造や労働文化の違いなどが影響していて、例えばスウェーデン、オランダ、ルクセンブルグ、フィンランドなど、新型コロナ拡大以前からテレワーク実施率がすでに30%を超えていた国もあります。[2]
国や産業、職業によってテレワークの実施率が異なるもう一つの理由として、デジタル化の度合いもあります。つまり、デジタル化の度合いが低いと、テレワークの実施が技術などの面からも難しくなります。国際経営開発研究所(IMD)がまとめた「2021年世界デジタル競争力ランキング」では、日本は64カ国中28位となっており[3]、デジタル化がまだ取り組まないといけない課題のようですが、withコロナの時代ではデジタル化への取り組みが必要に迫られて強化されているため、日本でもテレワークを提供できる業種・職種が徐々に増えていくだろうと考えられます。
しかし、デジタル化など実質的なハードルが取り除かれたとしても、日本におけるテレワークの将来は、最終的には企業とその従業員の意見にかかっています。
第3回「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(内閣府、2021年4-5月)では、第1回調査(2020年5-6月)と比較して、調査対象の10のテレワークのデメリット(社内での気軽な相談・報告が困難、取引先等とのやりとりが困難、機微な情報を扱い難いなどのセキュリティ面の不安など)のうち、9つでデメリットを感じている就業者の割合が若干減少しています。(第1回目の調査から増加があったデメリットは「画面を通じた情報のみによるコミュニケーション不足やストレス」のみ。)
また、新型コロナ拡大前と比べて生産性が増加したと回答した就業者の割合も第1回調査から徐々に増加し、生産性が減少または大幅に減少したと回答した就業者は減少しています。[1]
企業側は、毎日新聞社が国内の主要企業126社を対象に実施した調査では、新型コロナの流行が収束した後もテレワークを継続したいとする企業が9割に上っています。[4]
上記からは、日本は少なくとも新型コロナ以前のテレワーク実施率に戻ることはないと予想できそうです。また、日本がデジタル化を促進するならば、特定の産業や職業では今後テレワークの実施率が増加する可能性もあると思います。(スウェーデン出身 S.B)
[1](日本語)https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/pdf/result3_covid.pdf
[2](英語)https://www.oecd-ilibrary.org/docserver/d5e42dd1-en.pdf?expires=1637815978&id=id&accname=guest&checksum=5E3260C7A658B3BAAB8406EDE4DCEB5A
[3](英語)https://www.imd.org/centers/world-competitiveness-center/rankings/world-digital-competitiveness/
[4](日本語(有料記事)) https://mainichi.jp/articles/20210130/ddm/003/020/145000c
(英語)https://mainichi.jp/english/articles/20210203/p2a/00m/0li/036000c
今後も日本でテレワークが浸透するか、大変気になります。スウェーデンなどの北欧では以前から進んでいるんですね。日本のアフターコロナがどうなるか知りたいなと思っています。