<めじろ奇譚>私の受けたカルチャーショック(フランス編)

2021年9月23日

今回のテーマ、カルチャーショックは、自分の生まれ育った文化と異なる文化に触れたときに違いを感じてショックを受ける、というものです。

東京都下で生まれ育った私が思い出せるカルチャーショックと言えば、まず、大学生の時にフランスの地方都市に留学した時の事でした。
もう何十年も前のことになってしまいあんまり良く覚えていない、というのが正直なところですが、一番ショックだったのは日曜日にお店がほぼ全部閉まっている事でした。

当時はハンバーガーチェーンなんかもまだ地方都市まで展開しておらずボルドー等の大都市のみでしたから、地方都市の日曜日は死の街の様に静まり返っていました。バス停が集まっている街の中心地のカフェ数軒のうちのいくつかがあいているだけで、街中にあるスーパーもあいておらず、一般のお店も全て閉まっていました。
日曜日は買い物がまったく不可能なので土曜日に買い物をする、という習慣が出来たのでした。

そんな状況はそれから数十年過ぎてフランスの地方都市で仕事をしていた時も変りませんでした。

フランスで最初に住んだ都市はそれでも県庁所在地のまちだったのでそれなりに大きな都市でした。でも仕事で滞在していたまちはそれよりかなり小さな、ピレネー山脈のふもとに近いまちでした。わたしは数人の日本人の人とそのまちに滞在して仕事をしていましたが、日曜日にお店がお休みなのは当たり前。それどころか滞在していたホテルの食堂も日曜日には営業していなかったのです。滞在客がいるのになんでレストランを開けてくれないんだ、という我々の抗議に対してホテルの人は、“おれたちにも休みの日が必要だろ、だってホテルは毎日休みなく開けてるんだから”という返事でした。
なので我々は土曜日にあてがわれてた自転車で郊外のスーパーに買い出しに行って日曜日の食料を確保しておくか、日曜日でも空いている中華料理店に行く、という選択肢しかなかったのでした。

ただ、土曜日は市場の日で町中の広場という広場に大きな移動販売のトレーラーがやってきて、肉、野菜、魚、小物類まで買う事が出来ました。移動販売を専門にしているお店の様で、毎日違う町に行き市場でお店を開いていたのです。日本で想像する移動販売とはスケールが違う大型トラックで、大きなコンテナサイズの荷台がウインウインと開くとそこにはお店が、というもので、移動する店舗と言った方が正確かもしれません。地方のまちにはそれぞれ町の中心に広場があり、月曜日はこのまち、火曜日はここ、と移動していたのです。私たちのいた町はその中では規模が大きな町で人口が1万ぐらいありましたから、土曜日に市場が開かれていたのです。

日曜日は日曜日で町の中心の広場に古物商が店を開き、骨董市が毎週開催されました。
土日の午前中はそういった市場に行くのが日課であり、楽しみでもありました。

それ以外にフランスのいなかで学んだことは、お店でもなんでも中に入るときに必ず挨拶をすることでした。店に入ったら必ず“こんにちは、何なにを探しています”とか“ちょっと見せてください”と言います。レストランでも入ったら店の人に、“一人です、食事できますか”とか言ってから案内されたテーブルに着くのです。黙って勝手に席に座るのはありえない事でした。

私もそういう、お店でもなんでも挨拶してから入る、という習慣を身につけたわけですが、後年通訳になりアフリカの国々に行くようになってもっとおどろかされました。

知らない誰かとすれちがっただけでもみんな結構あいさつするんです。
どこのだれかも知らない人でも、すれ違うときに目があったら必ずこちらもむこうも“こんにちは”というのです。
私はそんな習慣ってとっても良いことだと思います。なんかやさしい心持になります。

だから、というわけではありませんが、私は東京でも食事をしに入った店とかではあいさつするようにしています。出るときにはかならず“ごちそうさま”と言ってでます。
おいしかったらおいしかったといいますし、そうするとお店の人もにっこりしてくれます。
日本、特に東京はひとに冷たい、とか言われますが、だれとでも挨拶するのは良い事だと思います。

しばらく前までわたしは長野の山の中に住んでいました。そこの小学生たちと初めて道で出会ったとき、彼らははじめて会った私に“こんにちは”って言ってくれました。アフリカの人と一緒だな、と私は嬉しくなったものです。

お客様は神様だ、などと偉そうにするより、みんなが笑顔になれる方が良いとおもうのですが。

フランス語通訳 芹澤 紀青


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