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<めざせ語学マスター>異文化遭遇!カルチャーショック

2021年9月7日

海外にいったときに、「え?ナニコレ?」と思ったことや、「なんかストレス感じるな・・・日本だったらありえないんだけれど。」と思ったことはありませんか?
しかし「郷に入れば郷に従え」や、「住めば都」という言葉もあります。
今回はそんな「異文化遭遇!カルチャーショック・・・と受容まで」の話です。

とりあえず社内に「あなたが経験したカルチャーショック」というアンケートをとってみました。

スペイン語のYOUTUBEに出てくるHayashiさん

なるほど、彼女もいろんな国でいろんな発見をしたんですね!(気のせいか食に関するものが多いような・・・)。関西出身の彼女はアメリカでお好み焼きを作ろうとして分厚い肉しかなくて失敗したらしいです。よほど悔しかったんだと思います。

また、スペインでは、彼女の先生は東アジア出身の生徒に挨拶のキスをする前に「キスしても大丈夫?」と聞くようになったとか。確かに挨拶のキスは最初は照れちゃいますよね。あるいは思い切ってやろうとするあまりベチョッとしたキスをしてしまいそうになります。でも、意外と他の人たちは頬っぺたをくっつけているだけだったりします。

Hayashi さんの「スペイン語の電話の仕方」はフランシールYOUTUBEチャンネルでご覧ください。

さてもう一人。ホンジュラスに2年、コスタリカに2年いたというKawamoto女史も経験。

バスで他の人が自分の上に乗ってくるってすごいですね。でも彼女も他の人の膝に乗っていたとは。・・慣れというのは恐ろしいものですね。

さて、そんな弊社HayashiさんもKawamotoさんも経験したというカルチャーショック。これを説明しようと、社会学者や心理学者が様々なモデルを発表しています。

① U曲線(U-curve)とW曲線(W-curve)

ノルウェーの社会学者リスガード(Lysgaard)は「適応とはU型曲線を辿る時間的経過プロセスである」と考え、新しい環境下で起こる人間の心理状態の変化をU曲線仮説で表しました(1955)。

彼はカルチャーショックを乗り越えて異文化に適応していく過程を、ハネムーン期不適応期(カルチャーショック)回復期適応期に分類しました。

ハネムーン期(Honeymoon stage)は、その言葉の通り、刺激と興奮で満足感の高い時期です。「変だな」と思ったり「素敵!」と思うことの連続で特に嫌な面が目に入らない時期です。

不適応期(Crisis/ Culture shock stage)には、ハネムーン期には気づかなかった疲れやストレスが表面化。見えなかった価値観や習慣の違いを受け入れられなくなり、フラストレーションがたまります。不眠になる人もいます。これはだいたい渡航後3か月-18か月くらいで起こるようです。12か月前後くらいが精神面で危機に陥りやすいといわれています。

回復期(Recovery stage)には、異文化のポジティブな面だけでなくネガティブな面も受け入れようとします。自信を取り戻し、落ち着く場所を見つけた感じがします。

適応期(Adjustment stage)には、自分の文化と異文化に寛容になり、環境に適応していきます。

では、適応期を経て帰国したらどうなるでしょうか。
中米に長期滞在したKawamotoさんの例です。
ディープな体験をした彼女は日本帰国後にも下のようなショックを受けます。

 

慣れ親しんだ中米の生活から日本に帰ると、日本ではふつうだった色んな音などに逆に気づくことになりました。また、人が冷たい、と感じたようです。バスで上に人が乗ってくるくらいの国から帰国したら接触を(コロナじゃなくても)避けたがる日本人の行動はとても冷たいと感じるでしょうね・・・。

上記のリスガードのU曲線をガラホーンは発展させ、異文化から戻った時間まで含めたW曲線を提唱しました(Gullahorn and Gullahorn (1963))。

しばらく異文化に身を置いた後、自国に戻ったときに、離れていた自国の文化に対しても外国のような感覚を覚えることを表しています(リエントリーショック ”Re-entry shock”)。

② ベネットの異文化感受性発達モデル

しかしその後、数々の学者が、U曲線、W曲線はモデルとしてはシンプルではあるが実際にはあてはまらないケースが多いとして、異文化受容について様々な理論を試みます。

アメリカの社会学者、M.ベネットは、カルチャー・ショックをネガテイプなものとはとらえず、人生における転機、たとえば転勤や転居、結婚といった場合に経験する「ショック]と同じものと捉えました。(異文化感受性発達モデル(Developmental Model of Intercultural Sensitivity (DMIS) 1986年)。

「否定(Denial)」・・「アメリカってあんまり日本と変わりないよね」(差異を否定する段階)
「防衛(Defense)」・・「日本のほうが礼儀正しいよね」あるいは反対に「アメリカのほうが個人主義で素晴らしい」(差異が見えてくる段階)
「最小化(Minimization)」・・「お箸とスプーン、食べ方は違うけれど根本は同じだよね!」(でも居心地は悪い段階)
「受容(Acceptance)」・・「価値観の違いってあるよね。みんなそれなりのシステムの中で生きてるよ。」(それぞれの文化で価値観が違うということを認められる段階)
「適応(Adaptation)」・・「挨拶のキスって大事だよね。でも日本人同士のときはお辞儀にしよう。」(バイカルチュラルな段階)
「統合(Integration)・・「今は誰がプレーヤーか、シチュエーションを見て対応しよう」(状況に依存して対応を変えられる段階)

彼のモデルは特に海外とか外国に限った話ではなく、組織と組織、家族と家族、などでも説明ができるそうです。最近はSNSなどでも似た意見の人で集団をつくることも多いので、違う意見を持つ集団との交流などにはあてはめて考えられるのかもしれません。
(参考:文化庁サイト「異文化コミュニケーションの日本語教育への活用」)

③ ベリーの文化変容モデル.

そして今回紹介する最後はベリーの「統合(Integration)」「同化(Assimilation)」「分離(Separation)」「周辺化(Marginalization)」という文化変容モデル(acculturation model)です(Berry, 1992)。彼は異文化適応のプロセスに加えて、異文化と接したときに、どの程度、異文化を取り入れて適応するのか、その受容態度にもタイプがあることに注目しました。そこで「自文化の特徴と文化的アイデンティティの維持を重視するか」「異文化の集団との関係の維持を重視するか」という二つの軸を設け、文化変容を4つのタイプに分けました。

「統合(Integration)」は、自分の文化を保持しながら新しい文化を取り入れていく態度、「同化(Assimilation)」は、自分の文化の保持をせずに新しい文化に適応していく態度、「分離(Separation)」は自分の文化を維持し新しい文化との関わりを避ける態度、「周辺化(Marginalization)」は自分の文化の保持もせず新しい文化への適応にも無関心である態度であるとされています。
もっとも安定して異文化適応がなされるのは「統合」的態度です。

ベリーの表を見ると、私がフランス留学中に会った様々な日本人留学生を思い出しました。日本人ともフランス人とも均等につきあいつつ自分のペースを守っている人(統合?)、「私もう日本人じゃないから・・」と言ってフランス人化した人(同化?)、日本人としか一緒にいなかった人(分離?結構多い)、どちらとも距離をとっていた人(周辺化?)たちがいました。「この人変わってるな」と思うこともありましたが(多分私もそう思われていたでしょう)、今なら彼らもそれぞれの方法で異文化と向き合っていたのかなと思えます。

ベリーの文化変容モデルはこちらにも説明があります。もっと興味ある方はぜひ。

“L D Worthy, Trisha Lavigne, and Fernando Romero “Culture and Psychology”
クロスカルチャーコンサルティング・アートセラピー・心理カウンセリング

4.終わりに

アンケートの回答から。スウェーデン出身のSさんはこう言います。「カルチャーショック程ではないかもしれませんが、私が今でも不思議に思っているのは、日本では生活音などのマナーが大事されているのに、宣伝カーや選挙カーなどが街中で拡声機を使って、大音量を発していいことです。」・・・なるほど。

もう一人、ロシア出身のM君の日本に来た時のカルチャーショックを最後にお伝えして今日は終わりにします!

そんな彼は今では日本人以上にきれいな日本語でメールを書いたりブログも書いてくれたりしています。彼のブログ「<めじろ奇譚>ロシアのジョークは日本で通じるか」も是非読んでください。

(鍋田)


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