フランス語を勉強している人は、フランス語検定以外に、DALFやDELFを受験する人が多くいます。実は私自身、こちらの試験を受けたことがないので、「DALF?DELF?どっちがレベルが高いのか?」ととまどうこともありますが、これらは下のようにクラス分けされています。
Diplôme d’études en langue française(DELF) | Diplôme approfondi de langue française (DALF) | ||||
A1 | A2 | B1 | B2 | C1 | C2 |
基礎段階の 言語使用者 簡単なやりとり |
基礎段階の 言語使用者 日常のやりとり |
自立した 言語使用者 意見を述べられる |
自立した 言語使用者 交渉もできる |
熟練した 言語使用者 流暢 |
熟練した 言語使用者 学術的 高度な会話 |
DALFのC1とC2を取得すると、フランスの大学に入学するための語学試験を免除されるそうです。(参照:日本フランス語試験管理センター)
なるほど、DALFのC1,C2というのはレベルが高くて難しそうだなとわかります。
また、スペイン語検定には、DELEスペイン語検定というものがあります(Diploma de Español como Lengua Extranjera:DELE)。1988年にスペイン語を母国語としない人々のスペイン語能力を測るテストとしてはじまり、現在世界100カ国以上で実施されているようです。そのレベル分けはこちら。スペイン語検定には、フランス語のように2つのカテゴリーはなく、全てDELE A1, DELEA2.. のように記載されます。
A1 | A2 | B1 | B2 | C1 | C2 |
入門 | 初級 | 中級 | 中上級 | 上級 | 最上級 |
お気づきかと思いますが、フランス語のDELF, DALFにも、スペイン語のDELEにも同じA1, A2、などがついています。このA1, A2, B1, B2, C1, C2って何?
それがCEFR(セファールと呼びます)。CEFRとは、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR: Common European Framework of Reference for Languages)のことです。
第二次世界大戦後、平和共存、人権擁護、民主主義確立などの目的で、1949年に欧州評議会(Council of Europe)が設立されました。この欧州評議会が相互理解・多様性の受容が重要という認識のもと、早くから進めていたのが言語教育への取り組みです。欧州評議会は1975年にはThe Threshold Level(「閾値」) というコミュニケーションに必要な項目についての図書を出版しましたが、その後1991年、言語学習に関するガイドラインを共通枠組みとして作成することを決めました。様々なデータを集め、検証、試行、議論を重ね、11年後の2001年、CEFRが発行されたのです。
つまり、とても長い期間を経て作成された貴重な枠組みであることが分かります(欧州評議会のCEFRのページはこちら)。
CEFRの等級はA1、A2、B1、B2、C1、C2の6段階に分かれており、全て「CAN―DO方式」で表されています。
例えばリスニング:
レベル | CEFR Can-do |
C2レベル | Has no difficulty in understanding any kind of spoken language, whether live or broadcast, delivered at fast native speed. (母語話者にかなり速いスピードで話されても、生であれ、放送であれ、どんな種類の話し言葉も難無く理解できる。 ) |
C1レベル | Can understand enough to follow extended speech on abstract and complex topics beyond his/her own field, though he/she may need to confirm occasional details, especially if the accent is unfamiliar.(特に耳慣れない話し方をする話者の場合には、時々 細部を確認しなければならない場合があるが、自分 の専門外の抽象的で複雑な話題についての長い発 話にも充分についていける。) |
B2レベル | Can understand standard spoken language, live or broadcast, on both familiar and unfamiliar topics normally encountered in personal, social, academic or vocational life. Only extreme background noise, inadequate discourse structure and/or idiomatic usage influences the ability to understand. (生であれ、放送であれ、身近な話題でなくとも、個人間、社会、学問、職業の世界で通常出合う話題について、標準語で話されれば理解できる。周囲の極端な騒音、不適切な談話構成や慣用表現だけが理解を妨げる。) |
B1レベル | Can understand the main points of clear standard speech on familiar matters regularly encountered in work, school, leisure etc., including short narratives (短い物語も含めて、仕事、学校、余暇などの場面で普段出合う、ごく身近な事柄について、標準語で明瞭に話されたものなら要点を理解できる。) |
A2レベル | Can understand enough to be able to meet needs of a concrete type provided speech is clearly and slowly articulated.(もし、はっきりとゆっくりとした発音ならば、具体的な必要性を満たすことが可能な程度に理解できる。) |
A1レベル | Can follow speech which is very slow and carefully articulated, with long pauses for him/her to assimilate meaning(意味がとれるように間を長くおきながら、非常にゆっく りと注意深く発音してもらえれば、発話を理解できる。) |
国際交流基金のJF日本語スタンダードのページから抜粋。同ページではCEFRが提供する493個の汎言語的に利用できるCan-doリストが閲覧できます。
CEFRはヨーロッパの言語だけでなく、今では日本の検定試験にも影響しています。あるいは既存の基準とCEFRを照合させて示す試験が増えました。
例えば英検はこんな感じ。
A1 | A2 | B1 | B2 | C1 | C2 |
3級 | 準2級 | 2級 | 準1級 | 1級 |
日本語についてはCEFRをベースに国際交流基金が開発したJF日本語教育スタンダートがあります。これもA1~C2の6段階で評価します。
私はいつもA1が一番レベルが高いと思えてしまうのは、学校教育でA=優、B=良、C=可という印象が残っているからでしょうか。Cのほうがレベルが高いなんて、なんだかなじめない気がしてしまいます。
もし私が「私日本語C2級なの」と言われたらつい「早くA級になったらいいね。」と変なことを言ってしまいそうです。
日本では英検やフランス語検定、スペイン語検定などのほうが知られていますが、ヨーロッパへ留学したい、就職したい、と言う人はCEFRに適合した検定資格をもっていたほうが有利だと思います。どこで仕事をするか、何のための検定かを見極めて受けることが大切かもしれませんね。
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